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透析室は、医師・看護師・臨床工学技士(CE)が同じフロアで、毎日同じ患者さんと向き合う少し特殊な職場です。CEとして10年間、透析室で看護師と一緒に働いてきた立場から、透析室看護師の仕事内容、1日の流れ、働き方の特徴、大変なところと向き合い方、向いている人、キャリアの広げ方をまとめました。透析室への異動や転職を考えている看護師の方の参考になればうれしいです。
透析室看護師の主な仕事内容
施設によって役割分担は違いますが、透析室の看護師が担う仕事は大きく分けて次のとおりです。
体重測定、バイタルサイン、前回透析後からの体調変化の確認。体重増加量から、その日の除水量を決める材料を集めます。
シャントへの穿刺と、透析終了時の返血・止血。施設によっては看護師とCEの両方が穿刺を担当します。
血圧低下、足のつり、気分不良などの症状への対応。透析中は血圧が変動しやすく、急変の予兆を早くつかむことが大切です。
シャント音の聴診、スリル(振動)の触診、腫れや発赤の確認。狭窄や閉塞の早期発見につなげます。
水分、カリウム、リンの管理、服薬の確認。長く付き合う患者さんだからこそ、少しずつ関係を築きながら指導できます。
透析患者さんは足の血流障害が起こりやすく、足の観察・ケアも看護師の大切な役割です。
シャントの見方については、以前書いたシャント管理の記事やエコーガイド下穿刺の記事も参考になると思います。医師の仕事や、医師とスタッフの連携については透析室の医師の仕事内容で紹介しています。
透析室看護師の1日の流れ(一例)

午前・午後の2クール制の透析施設を例にしています。夜間透析がある施設では、昼ごろに出勤して夜のクールまで担当する遅番のシフトが加わります。
時間帯ごとの仕事内容
朝:準備と情報収集
出勤したら、その日に担当する患者さんの前回の透析記録、検査結果、医師の指示の変更を確認します。透析条件やドライウェイトが変わっている患者さんは、特に注意して引き継ぎを受けます。回路の準備やプライミングは、CEと分担して行う施設が多いです。
来院〜開始:1日で一番慌ただしい時間
患者さんが来院したら、体重測定、血圧・体温の確認、前回からの体調の変化を聞き取ります。体重の増え方は、その日の除水量を決める大切な情報です。そのあと穿刺をして透析を開始します。多くの患者さんの開始が短い時間に重なるため、スタッフ同士で声をかけ合いながら進めます。
透析中:観察と記録
透析中は、1時間ごとなど決まった間隔で血圧や脈拍を測り、除水の状況、穿刺部の状態、患者さんの訴えを確認して記録します。血圧が下がりやすい患者さんは、より短い間隔で見ていきます。医師の回診にもこの時間に付き添い、気になる変化を報告します。
合間の時間:指導とケア
透析が安定している時間帯に、水分や食事の指導、薬の飲み方の確認、足の観察(フットケア)などを行います。長く通う患者さんだからこそ、少しずつ話を聞きながら指導できるのが透析室の良さです。
終了:返血と止血
決められた時間になったら返血し、針を抜いて止血します。止血を確認したら、終了時の体重と血圧を測り、帰宅しても大丈夫な状態かを確かめます。ここも終了時刻が重なるため、慌ただしくなる時間帯です。
夕方:片付けと翌日の準備
記録の整理、物品の補充、翌日の患者さんの確認をして1日を終えます。検査結果の確認や、医師への報告事項をまとめることもあります。
現場から見た実感
透析室の1日は、開始と終了の「山」と、透析中の比較的落ち着いた「谷」がはっきりしています。一緒に働いてきた看護師さんを見ていると、上手な人ほど、落ち着いた時間に次の山の準備を済ませていました。開始前に穿刺の順番を決めておく、返血が重ならないように声をかけ合っておく。そうした小さな段取りで、慌ただしい時間帯の余裕がまったく変わります。
月単位で入ってくる仕事
月に数回、透析の開始時や終了時に採血を行います。結果は透析条件や薬の調整に使われます。
足の傷や血流の状態を定期的に観察します。透析患者さんは足の血流障害が起こりやすく、早めに気づくことが大切です。
医師・CE・栄養士などと、体重管理や検査結果、シャントの状態について話し合います。
シャント音や静脈圧の変化を記録し、必要に応じてエコーでの評価やPTA(血管を広げる治療)につなげます。
新人1年目の流れ(一例)
最初の数ヶ月:透析の流れと観察を覚える
先輩について、来院から返血までの流れ、観察のポイント、記録の書き方、装置の基本的な操作を覚えます。
半年前後:穿刺を少しずつ担当する
刺しやすいシャントの患者さんから、先輩の見守りのもとで穿刺を始めます。独り立ちまでの期間は施設によって大きく違います。
1年目以降:受け持ちと指導
担当する患者さんを持ち、生活指導やフットケアにも関わります。透析室で2年以上働くと、透析技術認定士の講習会を受講できるようになります。
休日・シフトの特徴
多くの透析施設は、月・水・金と火・木・土の2つのグループで患者さんを受け入れているため、日曜日が休みで、土曜日も営業しているところが多いです。週休はシフトで平日に取る形が一般的です。夜間透析がある施設では、早番と遅番の組み合わせになります。夜勤がない、または少ないことは、透析室を選ぶ看護師さんの大きな理由のひとつです。
病棟とはここが違う:働き方の特徴
同じ患者さんと長く付き合う
維持透析の患者さんは、週3回・1回4時間ほど、何年にもわたって通院されます。入退院で患者さんが入れ替わる病棟とは違い、一人ひとりの生活背景まで知ったうえで看護ができるのが特徴です。一方で、関係がこじれたときに逃げ場がないという難しさもあります。
日勤中心で、生活リズムが整えやすい
透析クリニックは日勤中心のところが多く、夜勤がない、あるいは少ない働き方を選びやすいです。仕事帰りの患者さん向けに夜間透析を行っている施設では、遅番のシフトがあります。
機械とチーム医療に強くなる
透析装置のアラーム対応や、CEとの連携が日常的にあります。装置の仕組みが分かってくると、トラブル時にも落ち着いて対応できるようになります。
透析室の看護師が大変だと感じやすいところ
やりがいの大きい職場ですが、「透析室はきつい」という声を聞くこともあります。一緒に働いてきた看護師さんを見てきて、大変だと感じやすいのは次のような場面です。
朝の「穿刺・開始ラッシュ」
透析室の朝は、決まった時刻に患者さんが一斉に来院します。体重測定、血圧の確認、穿刺、透析の開始が短い時間に集中するため、慣れるまでは「回すだけで精一杯」と感じやすい時間帯です。返血が重なるクールの終わりも同じように慌ただしくなります。
穿刺のプレッシャー
シャントへの穿刺は、透析室の看護師にとって避けて通れない技術です。毎回同じ患者さんに刺すため、失敗すると患者さんの痛みやシャントへの負担に直結しますし、「あの人には刺してほしくない」と言われてしまうこともあります。新人のうちは、この穿刺のプレッシャーが一番つらいという声をよく聞きます。
患者さんとの関係に逃げ場がない
維持透析の患者さんとは、週3回、何年にもわたって顔を合わせます。信頼関係ができれば大きなやりがいになる一方で、関係がこじれたときや、厳しい言葉を受けたときにも、次の透析日にはまた向き合わなければなりません。病棟のように「退院したら終わり」がない分、気持ちの切り替えが難しいと感じる人もいます。
急変の緊張感
透析中は、除水による血圧低下、気分不良、足のつり、まれに抜針による出血など、急な変化が起こることがあります。複数の患者さんを同時に見ているので、どの患者さんを優先するかの判断も求められます。
機械とアラームへの苦手意識
透析装置のアラームや回路の仕組みに、最初は戸惑う看護師さんが多いです。CEがいる施設ではCEが対応することも多いですが、クリニックなどCEが少ない職場では、看護師が装置のトラブルに対応する場面もあります。
「スキルが偏るのでは」という不安
透析室の仕事は専門性が高い一方で、急性期の幅広い看護からは離れることになります。「ずっと透析室にいて、ほかの病棟で通用しなくなるのでは」と不安を感じる人もいます。
現場から見た実感
一緒に働いてきた看護師さんを見ていて、一番負担が大きそうだと感じたのは、やはり穿刺です。特に、血管が深い、蛇行が強いといった難しいシャントの患者さんほど、「誰が刺すか」でスタッフの空気がピリッとします。そういう患者さんのシャントをCEがエコーで確認して、血管の深さや走行を共有すると、看護師さんの表情が少し和らぐのを何度も見てきました。穿刺のプレッシャーは一人で抱えるものではなく、チームで分け合えるものだと思います。
大変さと向き合うためのヒント
先輩の穿刺をよく見て、刺す前に血管の走行と深さを触診で確かめる習慣をつけます。難しい患者さんの情報は、スタッフ全員で共有しておくと負担が分散します。
エコーで血管を見ながら刺す「エコーガイド下穿刺」は、難しいシャントの強い味方です。導入している施設では、積極的に練習させてもらいましょう。
アラームの意味や回路の仕組みは、CEに聞くのが一番の近道です。仕組みが分かると、トラブル時にも落ち着いて動けるようになります。
透析技術認定士や慢性腎臓病療養指導看護師などの資格は、「透析室で積んだ経験」を形にしてくれます。スキルの偏りへの不安も軽くなります。
エコーを使った穿刺の基本はエコーガイド下穿刺の記事、シャントの見方はシャントの記事で紹介しています。
職場選びで確認したいチェックリスト
- 穿刺の教育体制:独り立ちまでの期間、練習の方法、難しい患者さんを誰が担当するか
- 看護師とCEの役割分担:穿刺・返血・装置の操作を、どちらがどこまで担当するか
- 1クールあたりの受け持ち人数:1人の看護師が何人の患者さんを見るか
- 夜間透析とシフト:夜間透析の有無、遅番の頻度、土曜日の勤務
- エコーの有無:エコーガイド下穿刺を行っているか、練習できる環境があるか
- 病院かクリニックか:病院の透析室は入院患者さんや急性期の血液浄化にも関わる。クリニックは外来の維持透析が中心
透析室に向いている看護師
穿刺の技術を磨きたい
夜勤を減らしたい
機械に苦手意識がない(克服したい)
生活指導・患者教育が好き
多職種で連携するのが好き
逆に、急性期の多様な症例に触れ続けたい人や、毎日違う患者さんを受け持つ変化を楽しみたい人には、物足りなく感じるかもしれません。ICUや救急との兼務で急性血液浄化(CHDFなど)に関わる施設もあるので、配属先の業務範囲は事前に確認しておくのがおすすめです。
CEから見た「連携がうまい看護師」
現場から見た実感
一緒に働きやすいと感じる看護師さんは、「いつもと違う」に気づいて早めに声をかけてくれる人です。「今日はシャント音がいつもより高い気がする」「前回より血圧の下がり方が早い」といった小さな違和感を共有してもらえると、CE側も回路や設定をすぐに確認できます。逆にCEとしては、装置の設定やトラブルの理由を、看護師さんに分かる言葉で説明できるように心がけています。お互いの専門を尊重しつつ、遠慮せずに聞き合える関係が、結果的に患者さんの安全につながると感じています。
キャリアを広げる資格
透析室の経験を積んだ看護師が目指せる資格はいくつかあります。特に透析技術認定士とVA管理指導士は、看護師もCEも同じ試験を受ける多職種共通の資格です。
| 資格 | ポイント |
|---|---|
| 透析技術認定士 | 透析実務2年以上で受講資格。透析室の「共通言語」になる定番資格 |
| VA管理指導士 | 2026年開始の新資格。シャント管理・エコー評価に特化 |
| 慢性腎臓病療養指導看護師 | 看護師向け。腎臓病看護の実践能力を認定 |
| 腎不全看護認定看護師 | 日本看護協会の認定看護師。教育課程の修了が必要 |
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透析室で使う仕事道具
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まとめ
透析室の看護師は、同じ患者さんと長く関わりながら、穿刺・シャント管理・生活指導といった専門性を深められる仕事です。1日は、来院から穿刺・開始までのピーク、透析中の観察と指導、返血と止血という流れをクールごとに繰り返すのが基本です。日勤中心で生活リズムを整えやすい一方、朝の慌ただしさや長期的な人間関係の難しさもあります。CEや医師との連携が日常的にある職場なので、多職種で協力するのが好きな人にはやりがいの大きい環境だと思います。
よくある質問
透析未経験でも透析室に転職できますか?
未経験から受け入れている施設は多くあります。穿刺や装置の操作は入職後に教わるのが一般的なので、教育体制(プリセプター制度や穿刺の練習方法)がしっかりしているかを確認するのがおすすめです。
病院の透析室とクリニックではどう違いますか?
病院の透析室は入院患者さんや合併症の多い患者さん、急性血液浄化にも関わる機会があります。クリニックは外来の維持透析が中心で、日勤中心の働き方をしやすい傾向があります。
穿刺が苦手でも大丈夫ですか?
最初から上手な人はいません。先輩の穿刺をよく見て、血管の走行を触診やエコーで確認する習慣をつけることで、少しずつ上達していきます。エコーを使った穿刺の基本はこちらの記事で紹介しています。
透析室から病棟に戻ることはできますか?
戻ることはできます。透析室で身につく穿刺の技術、全身状態の観察、生活指導の経験は、病棟でも生かせます。不安がある場合は、急性期の患者さんにも関わる病院の透析室を選ぶと、ブランクを感じにくくなります。
透析室の看護師は夜勤がないのですか?
外来の透析クリニックは日勤中心のところが多く、夜勤はない、または少ないのが一般的です。ただし夜間透析を行う施設では遅番があり、病院の透析室では病棟との兼務や当直がある場合もあります。
1人で何人くらいの患者さんを担当しますか?
施設の人員配置によって違いますが、1クールで数人の患者さんを受け持つことが多いです。穿刺や開始の担当と、観察の担当を分けている施設もあります。
休憩はきちんと取れますか?
透析中の落ち着いた時間帯に、交代で休憩を取る施設が多いです。ただし、急変やトラブルがあると休憩がずれることもあります。
残業は多いですか?
透析の終了時刻がほぼ決まっているため、病棟に比べると残業は少なめの傾向があります。夜間透析がある施設や、記録の量が多い施設では、遅くなる日もあります。


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