エコーガイド下穿刺とは?短軸と長軸の違い・血管の見え方・PTAまでCEが解説

エコーガイド下穿刺とは?短軸法・長軸法の基本をCEが解説 透析の基礎知識

※本記事はPRを含みます。

CE基礎知識

触診だけでは血管の位置や状態が分かりにくいシャントに対して、超音波(エコー)で血管を映しながら穿刺する「エコーガイド下穿刺」。難しいシャントを抱える患者さんが増えている施設ほど、この技術の重要性が増しています。今回は、基本の考え方から、超音波の原理、血管の見え方、実際の手技の流れ、さらに近年広がっている「エコーガイド下PTA」まで解説します。

そもそも臨床工学技士がどんな仕事か知りたい方は臨床工学技士とはもどうぞ。

  1. エコーガイド下穿刺とは何か
  2. どんな場面で使われるのか
  3. 基本の見方:短軸法と長軸法
  4. 短軸と長軸の違いと使い分け
    1. 実際の現場での使い分け
  5. エコーガイド下穿刺のメリットと限界
      1. 成功率の向上
      2. 血管損傷リスクの低減
      3. 習熟に時間がかかる
      4. 現場から見た実感
  6. 超音波(エコー)の基本:画像はどうやって作られているか
      1. 反射した音を画像にしている
      2. 周波数が高いほど細かく、浅く見える
      3. 白・灰色・黒の意味
    1. 最初に覚えたい装置の調整
  7. 血管はエコーでどう見えるか
    1. 知っておきたい異常の見え方
    2. 針はどう映るか
  8. 石灰化・血腫・神経はエコーでどう見える?
    1. 石灰化:白く光り、その奥が黒く抜ける
    2. 血腫:血管の外にある、境界のはっきりしない影
    3. 神経:「蜂の巣」のような模様で、拍動しない
    4. 見分け方のまとめ
  9. エコーガイド下穿刺の流れ(一例)
      1. 事前評価(マッピング)
      2. 清潔の確保
      3. 短軸で血管を画面の中央に
      4. 針先を追いながら進める
      5. 逆血の確認と固定
  10. エコーガイド下PTA(VAIVT)とは
    1. 治療の前後で行うシャント機能の評価
  11. 超音波の勉強のしかた
      1. 上肢の血管の解剖を覚える
      2. 装置の基本操作に慣れる
      3. 正常な血管をたくさん見る
      4. 模型(ファントム)で穿刺練習
      5. 指導者のもとで実践し、資格で知識を整理する
  12. エコーガイド下穿刺の新人教育の進め方
    1. 段階ごとの目標と、次に進む目安
    2. 教えるときの4つのポイント
      1. 「プローブの手」と「針の手」を分けて練習する
      2. 画面と手元の「向き」を最初にそろえる
      3. 1回のふり返りで伝える課題は1つにする
      4. 交代のルールを先に決めておく
    3. 評価表に入れたい項目の例
  13. 導入している施設としていない施設の差
  14. シャントエコーで使う表示モードと装置の設定
    1. プローブ:体表の血管には高い周波数のリニアプローブ
    2. Bモード:形を見る
    3. カラードプラ:血流の向きと速さを色で見る
    4. パワードプラ:血流があるかどうかを感度よく見る
    5. パルスドプラ:1点の流速を波形で測る
    6. モードと主なつまみのまとめ
  15. シャントエコーで血管を評価する順番
      1. 上腕動脈で血流量(FV)と抵抗指数(RI)を測る
      2. 吻合部とその周辺を見る
      3. 穿刺に使う静脈をたどる
      4. 中枢側(心臓に近い側)まで確認する
  16. 穿刺に向いている血管・避けたい血管
  17. よくあるつまずきと対策
  18. エコーガイド下穿刺で使う主な物品
  19. エコーガイド下穿刺を学べる本
  20. まとめ
  21. よくある質問
      1. エコーガイド下穿刺は誰でも使える技術ですか?
      2. エコーを使えば穿刺の失敗はなくなりますか?
      3. 短軸法と長軸法、どちらを先に覚えるべきですか?
      4. エコーガイド下PTAは、どの施設でも受けられますか?
      5. エコーの勉強は何から始めればいいですか?
      6. エコーガイド下穿刺は、どのくらい練習すれば使えるようになりますか?

エコーガイド下穿刺とは何か

エコーガイド下穿刺は、超音波診断装置(エコー)を使って血管の位置・深さ・状態をリアルタイムに画面で確認しながら針を進める穿刺方法です。触診だけの穿刺は、術者の手の感覚と経験に依存する部分が大きいのに対し、エコーガイド下穿刺は血管そのものを「見ながら」針を進められるため、穿刺の成功率を上げ、血管を傷つけるリスクを減らせるというメリットがあります。

Point

エコーガイド下穿刺は、触診での穿刺が難しい患者さん(血管が深い・蛇行が強い・過去の穿刺で状態が変化している等)に特に有効とされる技術です。すべての患者さんに毎回使うわけではありません。

どんな場面で使われるのか

血管が深い患者さん

皮下脂肪が厚い、あるいは血管が深い位置にある場合、触診だけでは正確な位置の把握が難しい。

蛇行が強い血管

血管が真っ直ぐでなく、走行が複雑な場合、エコーで曲がり方を確認しながら穿刺できる。

穿刺を繰り返した血管

血管瘤や部分的な狭窄がある場合、エコーで内腔の状態を確認しながら安全な位置を選べる。

基本の見方:短軸法と長軸法

エコーで血管を映す方法には、大きく「短軸法(プローブを血管に対して垂直に当てる)」と「長軸法(プローブを血管の走行に沿って当てる)」の2つがあります。

短軸法(輪切り) 血管を輪切りの断面で見る

長軸法(縦断面) 血管の走行に沿って縦に見る

図: 短軸法(輪切り)と長軸法(縦断面)の見え方の違い

短軸法は、血管の位置を輪切りの断面で素早く把握しやすいのが特徴です。まず短軸法で血管の位置・深さを確認し、そこから針を進める、という使い方が基本になります。長軸法は、血管を縦に切った断面で見るため、針先が血管のどの深さまで進んでいるかを、長い区間にわたって連続的に確認しやすいという特徴があります。

短軸と長軸の違いと使い分け

「短軸」と「長軸」は、プローブを血管に対してどの向きに当てるかの違いです。短軸は血管を輪切りに、長軸は血管を縦切りにして見ます。穿刺のときは、針がビームの面を横切るか(短軸・交差法)、ビームの面に沿って進むか(長軸・平行法)の違いになります。

項目 短軸(短軸法) 長軸(長軸法)
別の呼び方 交差法、out-of-plane 平行法、in-plane
プローブの向き 血管の走行に対して垂直 血管の走行に沿って平行
血管の見え方 黒い丸(輪切り) 黒い帯(縦断面)
針の見え方 白い点(針の断面)。針先か途中かが分かりにくい 白い線。針全体と針先の深さを連続して追える
得意なこと 血管の位置・深さ・左右のずれを素早くつかむ。周りの動脈や神経との位置関係、分岐や蛇行の確認 針先が血管の前の壁を越えたか、後ろの壁に当たっていないかを確かめながら進める。狭窄の長さの評価
難しいところ 針先を見失わないよう、プローブを少しずつ動かして追いかける必要がある プローブと血管と針を一直線にそろえるのが難しい。少しずれると針や血管が画面から消える
向いている場面 まず血管を探すとき、細い・深い血管、周りに動脈や神経があるとき まっすぐな区間が続く血管、針を深く進めるとき

実際の現場での使い分け

  1. 短軸で探す:まず短軸で血管を画面の中央に出し、太さ・深さ・周りの組織を確認する
  2. 穿刺の方法を選ぶ:短軸のまま針先を追いかけるか、プローブを90度回して長軸に切り替えるかを、血管の状態で決める
  3. 針先を確認する:長軸なら針先が血管の中に入ったことを縦断面で確かめる。短軸なら、プローブを少しずつ動かして白い点が内腔の中にあることを確かめる

どちらか一方だけが正解というわけではなく、多くの施設では両方を組み合わせて使っています。新人の練習は、血管の位置をつかみやすい短軸から始め、慣れてから長軸で針先を追う練習に進むのが一般的です(下の「新人教育の進め方」でも段階をまとめています)。

エコーガイド下穿刺のメリットと限界

1

成功率の向上

血管の位置を直接確認できるため、触診だけでは難しい患者さんでも穿刺の成功率を上げられる。

2

血管損傷リスクの低減

血管の裏側まで貫いてしまう「穿通」など、触診だけの穿刺で起こりやすいトラブルを減らせる可能性がある。

3

習熟に時間がかかる

画面上の映像と実際の針先の位置感覚を一致させるまで、一定のトレーニング期間が必要になる。

たく

現場から見た実感

最初にエコーを使った時は、画面に映る血管と自分の手の感覚がうまく結びつかず、むしろ普通の穿刺より難しく感じました。ただ、慣れてくると「触診だけでは無理だと判断していた血管」にも対応できるようになり、できることの幅が広がった実感があります。触診の技術を置き換えるものではなく、両方を組み合わせて使う道具だと捉えています。

超音波(エコー)の基本:画像はどうやって作られているか

エコーガイド下穿刺を身につけるうえで、遠回りに見えて実は近道なのが「超音波の基本」を理解しておくことです。画面に何が映っているのかが分かると、プローブの当て方や装置の調整で迷わなくなります。

1

反射した音を画像にしている

プローブから出た超音波は、体の中の組織の境目で一部が反射して戻ってきます。この戻ってきた音(エコー)の強さと、戻るまでの時間を画像にしたものがBモード(断層像)です。性質の違う組織の境目ほど強く反射し、画面上では白く映ります。

2

周波数が高いほど細かく、浅く見える

超音波は周波数が高いほど細かいところまで見えますが、深くまでは届きにくくなります。シャントのような体表に近い血管は、高い周波数のリニア型プローブが向いています。深い臓器を見るときは、低い周波数のコンベックス型などを使います。

3

白・灰色・黒の意味

強く反射するもの(血管壁・石灰化・針など)は白く「高エコー」に、反射の少ない組織は灰色〜黒の「低エコー」に、血液のような液体はほとんど反射しないため黒い「無エコー」に映ります。正常な血管は「黒い内腔を白い壁が囲んでいる」ように見えます。

最初に覚えたい装置の調整

項目 何をするか ポイント
ゲイン 画面全体の明るさを調整する 明るすぎると血管内が白っぽくなり、血栓と見分けにくくなる
深度(Depth) 画面に表示する深さの範囲 見たい血管が画面の中央付近に来るように合わせる
フォーカス 最もくっきり見える深さ 血管の深さに合わせると壁や針が見やすくなる
カラードプラ 血流の有無と向きを色で表示 一般的にはプローブに向かう流れが赤、遠ざかる流れが青(設定による)
パルスドプラ 特定の位置の血流速度を波形で表示 シャントの血流量や抵抗の評価に使う

血管はエコーでどう見えるか

エコーの短軸像での動脈と静脈の見え方
図:エコーの短軸像での動脈と静脈の見え方

穿刺する血管を正しく選ぶためには、動脈と静脈、そしてシャント血管の見え方の違いを知っておく必要があります。

血管 Bモードでの見え方 見分けるコツ
動脈 壁が厚めで、きれいな円形 拍動している。プローブで軽く押してもつぶれにくい
静脈 壁が薄く、楕円形のことが多い プローブで軽く押すとつぶれる。拍動しない
シャント静脈 静脈が太く発達し、壁が厚くなっていることも カラードプラで速い血流、拍動性の流れが見える

知っておきたい異常の見え方

狭窄

内腔が細くなって見える。狭い部分では血流が速くなり、カラードプラで色が混ざったモザイク状に見えることがある。

血栓

黒いはずの内腔に灰色〜白っぽいものが詰まって見え、その部分の血流信号がない。プローブで押してもつぶれない。

瘤(こぶ)

血管が局所的に大きくふくらんで見える。内部に血栓がついていることもあり、穿刺部位として避けるべきか判断する材料になる。

石灰化

血管壁が強く白く光り、その奥が影のように黒く抜ける(音響陰影)。硬くて針が通りにくい部分の目安になる。

針はどう映るか

金属の針は超音波を強く反射するため、白い線や点として映ります。長軸法では針全体が白い線として見えますが、短軸法では針を輪切りにした「白い点」としてしか見えません。このため、短軸法では画面上の白い点が針先なのか、針の途中なのかを見誤りやすく、プローブを少しずつ動かしながら針先を追いかける(針先を見失わない)ことが大切です。

石灰化・血腫・神経はエコーでどう見える?

穿刺の前にエコーで確認したいのは、血管そのものだけではありません。針が通りにくい石灰化、前回の穿刺などでできた血腫、そして傷つけてはいけない神経の3つは、見え方の特徴を知っておくと見分けやすくなります。

石灰化・血腫・神経のエコー短軸像での見え方の模式図
図:石灰化・血腫・神経の見え方(短軸像の模式図)

石灰化:白く光り、その奥が黒く抜ける

石灰化した部分は超音波をとても強く反射するため、血管の壁に沿って白く光る点や線として映ります。超音波がその奥まで届かないので、後ろ側が影のように黒く抜けます。これを音響陰影といいます。長軸で見ると、壁に白い点が並び、その下に黒い帯が何本も落ちているように見えます。

長軸像で見た石灰化と、動脈の横を走る神経の短軸像の模式図
図:長軸像で見た石灰化(左)と、動脈のすぐ横を走る神経の短軸像(右)

透析を受けている患者さんは、カルシウムやリンの代謝の乱れなどから、血管の石灰化が起こりやすいとされています。石灰化のある部分に穿刺すると、次のようなことが起こりやすくなります。

  • 壁が硬く、針が入りにくい・針先がそれる
  • 音響陰影で、奥の壁や針先が画面で見えなくなる

できるだけ石灰化のない区間を選び、どうしても近くを刺す場合は、プローブの角度を少し変えて、陰影がどこに落ちているかを確かめてから穿刺の位置を決めます。

血腫:血管の外にある、境界のはっきりしない影

血腫は、血管の外にもれた血液がたまったものです。エコーでは、血管の外側に、境界のはっきりしない領域として映ります。見え方は時間とともに変わり、液体に近いうちは黒っぽく、固まってくると内部がまだら(不均一)に見えるようになります。

  • カラードプラを当てても、内部に血流の信号がない
  • 大きな血腫は、外から血管を押して、血管を細く・つぶれたように見せることがある
  • 前回の穿刺部の近くにできていることが多い

血腫の上や、血腫を通り抜けるような穿刺は避けます。また、血腫のように見える部分の中に拍動する血流が見える場合は、血管の外に血流が続いている「仮性瘤」の可能性があります。自己判断で穿刺せず、医師に報告してください。

神経:「蜂の巣」のような模様で、拍動しない

神経は、細い神経の束(神経束)がたくさん集まってできています。短軸(輪切り)で見ると、小さな黒い粒が白い膜に囲まれた「蜂の巣」のような模様に見えます。神経を探すときは短軸で見るのが基本で、プローブを腕に沿って少しずつ動かすと、蜂の巣の模様が同じ形のまま続いて見えます。上の図の右側のように、動脈のすぐ横を並んで走っていることも多いので、動脈を見つけたら、その周りに蜂の巣の模様がないかも一緒に確認します。

血管と見分けるポイントは次のとおりです。

  • 内腔が黒く抜けない(血管は中が黒い)
  • 拍動しない
  • カラードプラで血流の信号がない
  • プローブで押しても、ほとんどつぶれない(静脈はつぶれる)

腕では、肘のあたりで上腕動脈のすぐそばに正中神経が、手首に近い前腕の橈側では、橈側皮静脈の近くに橈骨神経の浅枝が走っていることがあります。動脈の近くや手首に近い部分を穿刺するときは、周りに神経がないかをエコーで確認しておくと安心です。穿刺中に「電気が走るような痛み」や指先のしびれを患者さんが訴えた場合は、針を進めるのをやめ、すぐに指導者や医師に報告します。

見分け方のまとめ

見えているもの Bモードでの見え方 プローブで押すと カラードプラ 拍動
動脈 黒い内腔を厚い壁が囲む つぶれにくい 血流あり あり
静脈 黒い内腔を薄い壁が囲む つぶれる 血流あり なし(シャント静脈は拍動性の流れ)
血栓 内腔に灰色〜白っぽいものが詰まる つぶれない その部分は血流なし なし
石灰化 壁が白く光り、奥が黒く抜ける 変わらない なし なし
血腫 血管の外に、境界不明瞭な黒っぽい〜まだらな領域 少し形が変わることも なし なし
神経 蜂の巣状(短軸) ほとんどつぶれない なし なし

※図はいずれも分かりやすくした模式図です。実際の見え方は、装置の設定、プローブの当て方、患者さんの体格や部位によって変わります。判断に迷う場合は、指導者や医師に確認してください。

エコーガイド下穿刺の流れ(一例)

施設によって手順は異なりますが、一般的な流れは次のとおりです。実際の手技は必ず施設の手順と指導者の指示に従ってください。

1

事前評価(マッピング)

穿刺前に血管の太さ・深さ・走行・分岐、狭窄や血栓の有無を確認し、穿刺に使える区間を把握しておきます。毎回の穿刺の前にざっと確認するだけでも、トラブルを減らせます。

2

清潔の確保

プローブは患者さんごとに清拭・消毒し、穿刺部に当てる場合はプローブカバーや清潔なゼリーを使うなど、感染対策を徹底します。

3

短軸で血管を画面の中央に

短軸法で血管を画面中央に映し、プローブの中心が血管の真上に来るようにします。深さを確認して、針の刺入角度の目安を決めます。

4

針先を追いながら進める

針を刺したら、画面上で針先を見失わないようにプローブを動かしながら進めます。針先が血管の前壁を越えて内腔の中央に入ったことを確認し、必要に応じて長軸法に切り替えて、針先が後壁に当たっていないかを確認します。

5

逆血の確認と固定

逆血を確認し、針先の位置を保ったまま固定します。固定後にもう一度エコーで針先の位置を確認すると、脱血不良などのトラブルを防ぎやすくなります。

エコーガイド下PTA(VAIVT)とは

PTA(バルーンによる血管拡張)のイメージ
図:PTA(バルーンによる血管拡張)のイメージ

シャントが狭くなったり詰まったりしたときに、カテーテルを使って血管の中から治療する方法をVAIVT(バスキュラーアクセスインターベンション治療)といいます。代表的なのが、狭窄部分に風船(バルーン)を入れてふくらませ、血管を広げる経皮的血管形成術(PTA)です。

従来は、X線透視と造影剤で血管を映しながら行うのが一般的でした。これをエコーで血管を映しながら行うのが「エコーガイド下PTA」です。

エコーガイド下PTA 透視下PTA
被ばく なし あり(患者さん・スタッフとも)
造影剤 原則不要 必要
見えるもの 血管壁・内腔・周囲の組織まで見える 血管の中の造影剤の流れが見える
得意な場所 腕のシャントなど体表に近い血管 中心静脈など深い場所・広い範囲
実施場所 設備が整えば透視室以外でも行える 透視装置のある部屋が必要

エコーガイド下PTAは、被ばくがなく造影剤も使わずに済むため、造影剤にアレルギーのある患者さんなどにもメリットがあります。一方で、鎖骨の下の静脈など、エコーで見えにくい場所の病変には透視下での治療が必要になるため、病変の場所によって使い分けられています。

治療の前後で行うシャント機能の評価

PTAが必要かどうかの判断や、治療の効果を確かめるために、パルスドプラでシャントの機能を数値で評価します。代表的なのが、上腕動脈で測る血流量(FV)と血管抵抗指数(RI)です。血流量が少ない、あるいは抵抗指数が高い場合は、シャントのどこかに狭窄がある可能性を考えます。筆者の施設では、FVが400mL/分以下、RIが0.6以上を、狭窄を疑う目安にしています。ただし評価の基準は施設や患者さんの状態によって異なるため、数値だけで判断せず、シャント音や透析中の脱血状況などとあわせて総合的に評価します。

CEの関わり方

施設によっては、臨床工学技士が穿刺前のエコー評価や、エコーガイド下PTAでのプローブ操作・画像の描出、物品の準備などを担当しています。シャントエコーの技術は、穿刺だけでなく治療のサポートにも生かせるスキルです。

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超音波の勉強のしかた

エコーは、座学だけでも実技だけでも上達しにくい分野です。次の順番で、知識と手の感覚を少しずつつなげていくのがおすすめです。

1

上肢の血管の解剖を覚える

橈骨動脈・尺骨動脈・上腕動脈、橈側皮静脈・尺側皮静脈・肘正中皮静脈など、腕の血管の名前と走行を図で覚えます。シャントの記事もあわせてどうぞ。

2

装置の基本操作に慣れる

ゲイン・深度・フォーカスを変えると画像がどう変わるかを、実際に触って確かめます。

3

正常な血管をたくさん見る

施設のルールの範囲で、スタッフ同士の腕などで正常な動脈・静脈を描出する練習をします。正常を知っているからこそ、異常に気づけるようになります。

4

模型(ファントム)で穿刺練習

血管を模した練習用のゲル模型を使えば、患者さんに負担をかけずに針先を追う練習ができます。

5

指導者のもとで実践し、資格で知識を整理する

経験を積んだら、超音波検査士(血管領域)など、臨床工学技士も受験できる資格を目標にすると、体系的に知識を整理できます。シャント管理とエコー評価を問うVA管理指導士もおすすめです。

理解度チェックに

エコー評価・穿刺・VAIVTなども出題範囲に含む「VA管理指導士 対策問題集」を公開しています。まずは無料の10問から試してみてください。

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エコーガイド下穿刺の新人教育の進め方

ここからは、教える側の目線でのまとめです。エコーガイド下穿刺は、知識・装置の操作・両手の協調と、身につけることが多い技術です。いきなり患者さんで練習するのではなく、段階を分けて、一つずつできることを確かめながら進めると、新人も指導者も安心して取り組めます。

エコーガイド下穿刺の新人教育のステップ
図:エコーガイド下穿刺の新人教育のステップ(一例)

段階ごとの目標と、次に進む目安

段階 できるようになること 次に進む目安(例)
1. 座学 腕の血管の名前と走行、ゲイン・深度・フォーカスの意味を説明できる 指導者の簡単な質問に答えられる
2. 描出練習 短軸・長軸で動脈と静脈を描き分け、血管を画面の中央に保てる 指定された血管をすぐに描出できる
3. ファントム 針先を画面から見失わずに、血管の中まで進められる 短軸・長軸のどちらでも、針先を追いながら穿刺できる
4. 患者さんで描出のみ 穿刺前の評価(太さ・深さ・走行・石灰化や血腫の有無)を報告できる 評価の内容が、指導者の判断とほぼ一致する
5. 見守りのもとで穿刺 太く浅い、まっすぐな血管で穿刺できる 決めた回数を続けて、トラブルなく穿刺できる
6. 難しい血管・単独へ 深い・細い・蛇行した血管にも対応できる 評価表で到達度を確認し、施設の基準を満たす

教えるときの4つのポイント

1

「プローブの手」と「針の手」を分けて練習する

最初からプローブと針を同時に動かすのは難しいものです。まずはプローブだけで血管を描出し続ける練習をして、プローブが安定してから、ファントムで両手を使う練習に進みます。

2

画面と手元の「向き」を最初にそろえる

プローブの目印(マーク)と、画面の左右が患者さんのどちら側にあたるかを、毎回はじめに確認する習慣をつけます。向きがあいまいなままだと、針を進める方向を間違えやすくなります。

3

1回のふり返りで伝える課題は1つにする

うまくいかなかった点をまとめて伝えても、次の穿刺で全部を直すのは難しいものです。良かった点と次の課題を1つずつ、記録に残しておくと、上達の様子も見えやすくなります。

4

交代のルールを先に決めておく

「針先を見失ったらいったん止める」「うまくいかなければ指導者と交代する」など、患者さんの負担を増やさないためのルールを、穿刺の前に新人と共有しておきます。具体的な回数や手順は、施設の決まりに従います。

評価表に入れたい項目の例

  • 穿刺前の評価:血管の太さ・深さ・走行、石灰化・血腫・瘤などの有無を確認できたか
  • 装置の設定:深度・ゲイン・フォーカスを、血管が見やすいように調整できたか
  • 清潔操作:プローブカバーや消毒など、施設の手順どおりにできたか
  • 穿刺中:針先を画面から見失わずに進められたか。見失ったときに止まれたか
  • 穿刺後:針先の位置を確認し、固定まで安全にできたか
  • 患者さんへの声かけ:始める前の説明や、痛みの確認ができたか
患者さんへの配慮も忘れずに

新人が描出や穿刺を担当するときは、事前に患者さんへ説明し、了解を得てから行います。時間がかかりそうなときは無理をせず、指導者に交代することも大切です。患者さんとの信頼関係を守ることが、結果的に新人が経験を積める環境づくりにもつながります。

導入している施設としていない施設の差

エコーガイド下穿刺は、専用の超音波診断装置と、それを使いこなすトレーニングが必要になるため、すべての施設で標準的に導入されているわけではありません。難しいシャントを抱える患者さんが多い施設や、穿刺トラブルの減少に力を入れている施設ほど、導入・活用が進んでいる印象があります。転職や施設選びの際に、こうした機器・技術への投資姿勢を見ておくのも、一つの判断材料になるかもしれません。

短軸法(out-of-plane)
長軸法(in-plane)
穿刺成功率の向上
血管損傷リスクの低減
習熟には時間が必要

シャントエコーで使う表示モードと装置の設定

シャントエコーでは、白黒の画像(Bモード)だけでなく、血流を色や波形で表示する「ドプラ」のモードを組み合わせて使います。モードごとに「わかること」が違うので、目的に合わせて切り替えるのがコツです。

シャントエコーで使う4つの表示モード(Bモード・カラードプラ・パワードプラ・パルスドプラ)の模式図
図:シャントエコーで使う4つの表示モード

プローブ:体表の血管には高い周波数のリニアプローブ

シャントの血管は皮膚の近くにあるため、高い周波数のリニアプローブ(平らな形のプローブ)を使います。周波数が高いほど細かいところまで見える一方、深いところまでは届きにくくなります。深い血管を見るときは、周波数の設定を下げたり、深度を深くしたりして調整します。

Bモード:形を見る

超音波が反射して返ってくる強さを、白黒の明るさで表した断層像です。血管の太さ・深さ・走行、壁の厚さ、狭窄・血栓・瘤・石灰化など、「形」の評価はすべてBモードが基本です。ドプラのモードを使うときも、まずBモードで血管をきれいに描出してから切り替えます。

カラードプラ:血流の向きと速さを色で見る

決めた範囲(カラーボックス)の中の血流を、向きと平均的な速さに応じて色で表示します。一般的な設定では、プローブに近づく流れが赤系、遠ざかる流れが青系で表示されます(設定で入れ替えられます)。

  • 狭窄の見つけ方:狭い部分では流れが速くなり、色が明るくなったり、赤と青が混ざったモザイク状になったりします
  • 折り返し(エイリアシング):流速レンジ(表示できる速さの上限)を超える速い流れは、反対の色に「折り返して」表示されます。狭窄の目印になる一方、流速レンジが低すぎると全体がモザイクになって見にくくなります
  • 流速レンジの合わせ方:速いシャント血流では高めに、遅い血流を探すときは低めにします。高すぎると遅い流れが色に出なくなります
  • カラーボックスは小さめに:範囲を広げすぎると画面の更新が遅くなるため、見たい部分に絞ります

パワードプラ:血流があるかどうかを感度よく見る

血流の向きや速さではなく、ドプラ信号の「強さ」を色で表示するモードです。

  • 向きは分からない(多くの装置では単色)
  • 遅い流れや細い血管の血流も映りやすい
  • プローブの角度の影響を受けにくく、折り返しが起こらない

「閉塞しているのか、細い血流が残っているのか」を確かめたいときや、側副血行路を探すときに役立ちます。

パルスドプラ:1点の流速を波形で測る

画面上の1か所(サンプルボリューム)の血流の速さを、時間の流れにそって波形で表示します。シャントの機能評価で使う血流量(FV)と血管抵抗指数(RI)は、このモードで上腕動脈を測って求めます。

FVとRIの求め方

FV(mL/分) = 時間平均流速(cm/秒) × 血管の断面積(cm²) × 60

RI = (収縮期最高流速 − 拡張末期流速) ÷ 収縮期最高流速

例:時間平均流速が40cm/秒、上腕動脈の内径が5mm(半径0.25cm)なら、断面積は約0.196cm²。FV = 40 × 0.196 × 60 ≒ 471mL/分。

正確に測るためのポイントは次のとおりです。

  • 角度補正は60度以内:血流とビームの角度が大きいほど誤差が大きくなります。リニアプローブではビームを傾ける(ステア)機能も使います
  • サンプルボリュームの幅:血管の壁に触れない範囲で、内腔いっぱいに広げます。中央だけで測ると、速い血流ばかりを拾って血流量を多く見積もってしまいます
  • 血管径はBモードで正確に:血管の前の壁と後ろの壁がどちらもはっきり見える断面で測ります。径のわずかな誤差が、断面積を通して血流量に大きく影響します
  • 測る位置を毎回そろえる:肘より少し中枢側の、まっすぐな部分で測ると、経過を比べやすくなります

なお、上腕動脈が肘より高い位置で2本に分かれている人(高位分岐)もいます。その場合は、2本の血流量を足して評価するなど、測り方を変える必要があります。

モードと主なつまみのまとめ

モード わかること 主に調整するつまみ 注意点
Bモード 血管の太さ・深さ・走行、壁・内腔の異常 深度、ゲイン、フォーカス ゲインが高すぎると内腔に白いノイズが出て、血栓と見分けにくい
カラードプラ 血流の向き・速さ、狭窄部の速い流れ 流速レンジ、カラーゲイン、カラーボックスの範囲、ステア 流速レンジが低すぎると全体が折り返して見にくい
パワードプラ 血流があるかどうか(遅い流れも) ゲイン、範囲 向きや速さは分からない
パルスドプラ 1点の流速の波形、FV・RI サンプルボリュームの位置・幅、角度補正、流速レンジ 角度補正は60度以内。径の測り方で血流量が大きく変わる

測ったFV・RIを使ったPTAの適応の考え方は、シャントのPTAとはで解説しています。

シャントエコーで血管を評価する順番

穿刺の前や定期評価でシャントをエコーで見るときは、血液が流れる順番に沿って確認すると、見落としが少なくなります。

1

上腕動脈で血流量(FV)と抵抗指数(RI)を測る

シャント全体の機能を数値でつかむ入口です。測る位置や角度で数値が変わるので、毎回なるべく同じ位置・同じ条件で測ることが、経過を比べるうえで大切です。

2

吻合部とその周辺を見る

吻合部の近くは狭窄が起こりやすい場所です。内腔が細くなっていないか、カラードプラで色が混ざるような速い流れがないかを確認します。

3

穿刺に使う静脈をたどる

穿刺する区間の太さ・深さ・走行・分岐、瘤や血栓の有無を確認します。前回の穿刺部の状態も、このときに一緒に見ておきます。

4

中枢側(心臓に近い側)まで確認する

穿刺部より中枢側に狭窄があると、静脈圧の上昇や止血しにくさにつながります。腕の付け根に近い部分まで、追える範囲で確認しておくと安心です。

あわせて読みたい

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穿刺に向いている血管・避けたい血管

見るポイント 穿刺に向いている 注意したい・避けたい
太さ 針の太さに対して十分な内腔がある 細く、針を進める余裕がない
深さ 皮膚から近く、エコーで前壁がはっきり見える 深く、針の角度を大きくしないと届かない
走行 まっすぐな区間がある程度続く 急なカーブや分岐の直前
血管の壁と内腔 壁が均一で、内腔に異物がない 瘤、壁の肥厚、血栓、石灰化がある
周りの組織 周囲に腫れや血腫がない 前回の穿刺による血腫や、感染が疑われる発赤がある

どの数値から「穿刺に向いている」とするかは施設によって決め方が違います。自分の施設の基準や、指導者の判断に従ってください。

よくあるつまずきと対策

針先を見失う

短軸法では、画面の白い点が針先なのか途中なのかが分かりにくくなります。針を少し進めたらプローブも少し動かす、を繰り返して、常に針先を追いかけます。

プローブで静脈を押しつぶす

静脈はプローブを軽く当てただけでもつぶれます。ゼリーを十分に使い、プローブは皮膚に「乗せる」くらいの力で当てると、本来の太さで見えます。

後壁まで貫いてしまう

前壁を越えた手応えのあとに勢いよく進めると、後壁に届きやすくなります。長軸法に切り替えて、針先と後壁の距離を確認しながら進めます。

血管が逃げる

皮膚の下で血管が左右に動くと、針がそれやすくなります。プローブを持たない側の手で皮膚を軽く張り、血管を固定してから刺入します。

エコーガイド下穿刺で使う主な物品

  • リニア型プローブ:体表に近い血管を細かく見られる、高い周波数のプローブ
  • プローブカバー・清潔なゼリー:穿刺部の清潔を保つため。施設の感染対策の手順に従って使います
  • プローブの消毒用品:患者さんごとに清拭・消毒します
  • 穿刺針と固定用のテープ:通常の穿刺と同じ物品。固定後にもう一度エコーで針先の位置を確認すると安心です

エコーガイド下穿刺を学べる本

エコーの操作は、画像の見え方と手の動きを結びつけることが大切です。動画や写真の多い本で予習しておくと、現場での練習がスムーズになります。

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※価格は2026年10月時点の目安です。最新の価格・版・在庫は販売ページでご確認ください。

まとめ

エコーガイド下穿刺は、触診だけでは対応が難しいシャントに対して、血管を画面で確認しながら安全に穿刺するための技術です。短軸法・長軸法という2つの基本的な見方を理解し、実際の手技に習熟することで、これまで難しいと判断されていた患者さんへの対応の幅を広げられます。透析膜・水処理・シャントの基礎知識と組み合わせて理解することで、透析という治療全体のつながりが見えてくるはずです。

よくある質問

Q

エコーガイド下穿刺は誰でも使える技術ですか?

専用の装置と、画面を見ながら針を操作するトレーニングが必要です。多くの施設では、まず触診での穿刺に十分習熟した上で、指導者のもとで段階的に練習していく流れになっています。

Q

エコーを使えば穿刺の失敗はなくなりますか?

失敗率を下げる助けになりますが、完全になくなるわけではありません。血管の状態や患者さんの体格によっては、エコーを使っても難しい場合があります。

Q

短軸法と長軸法、どちらを先に覚えるべきですか?

血管の位置を把握しやすい短軸法から練習を始め、慣れてきたら長軸法での針先の追い方を練習していくのが、比較的取り組みやすい順序だと感じています。

Q

エコーガイド下PTAは、どの施設でも受けられますか?

エコーでの治療に慣れた医師と設備が必要なため、実施している施設は限られます。また、中心静脈など深い場所の病変は透視下での治療が必要になるため、病変の場所によって治療法が選ばれます。

Q

エコーの勉強は何から始めればいいですか?

まず上肢の血管の解剖を覚え、装置のゲイン・深度などの基本操作に慣れたうえで、正常な血管をたくさん見ることから始めるのがおすすめです。正常な見え方が分かると、狭窄や血栓などの異常に気づけるようになります。

Q

エコーガイド下穿刺は、どのくらい練習すれば使えるようになりますか?

個人差が大きいですが、正常な血管を描出する練習から始めて、模型での穿刺練習、指導者のもとでの実践と段階を踏むのが一般的です。焦らず、まずは「針先を見失わずに追える」ことを目標にするとよいと思います。

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