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シャントが狭くなったときの治療として、いちばんよく行われているのがPTA(経皮的血管形成術)です。透析室では「最近、静脈圧が高い」「脱血が悪い」といった変化から狭窄に気づき、シャントエコーで評価して、医師がPTAの必要性を判断します。透析室で10年、シャントを毎日見てきたCEの目線で、PTAの基本、エコーガイド下PTAと造影下PTAの違い、バルーンの種類、シャントエコーから見たPTAの適応の条件までをまとめました。
- PTAは、狭くなったシャントの血管を、バルーン(風船)でふくらませて広げる治療
- 日本透析医学会のガイドラインでは、狭窄率50%以上で、脱血不良・静脈圧上昇などの臨床的な異常が1つ以上あることが治療の条件
- 前回の治療から3か月以内の場合は、エコーで血流量400mL/分以下、またはRI 0.6以上などが算定の要件になっている(2020年度の診療報酬改定)
- エコーガイド下PTAは被ばく・造影剤なし、造影下PTAはシャント全体と中心静脈まで見渡せるのが強み
PTA(VAIVT)とは

PTA(経皮的血管形成術)は、皮膚から細い管(シース)を血管に入れ、ガイドワイヤーに沿ってバルーンカテーテルを狭窄部まで進め、バルーンをふくらませて血管を広げる治療です。シャントの狭窄や閉塞に対して、カテーテルを使って血管の中から行う治療をまとめてVAIVT(バスキュラーアクセスインターベンション治療)と呼び、PTAはその代表的な方法です。
シャントの静脈には、動脈の勢いのある血流が流れ込み続けます。その影響で血管の内側の壁が厚くなる(内膜肥厚)などして、特に吻合部の近くや、血管が曲がる部分、穿刺をくり返す部分に狭窄が起こりやすくなります。狭窄を放っておくと、透析が十分にできなくなったり、シャントが詰まって(閉塞して)しまったりします。
シャントの基本はシャントとは、エコーの基本はエコーガイド下穿刺の記事でまとめています。
狭窄に気づくきっかけ
PTAが必要になる狭窄は、多くの場合、透析室での日々の観察から見つかります。日本透析医学会のガイドラインでは、次のような所見が狭窄を疑うきっかけとして挙げられています。
身体所見(視診・触診・聴診)
- 視診:駆血すると狭窄部がはっきり見える。皮膚の色やむくみの有無も見る
- 触診:狭窄部は硬く触れることが多い。狭窄部より末梢側ではスリルが弱くなり、拍動(パルス)のように触れることがある
- 聴診:狭窄部では高い音、末梢側では途切れる音(断続音)、中枢側では連続した音が聞こえる
透析中の変化
| 変化 | ガイドラインに挙げられている目安 |
|---|---|
| 脱血不良(血流不全) | 吻合部の方向に向けて穿刺しても、脱血が180mL/分以下の状態が複数回ある |
| 静脈圧の上昇 | 静脈圧が上がる傾向があり、50mmHg以上の上昇や、常に150mmHg以上の状態が続く。止血時間の延長をともなうことが多い |
| 再循環による透析効率の低下 | 透析効率に10%以上の低下がみられる |
出典:日本透析医学会「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」(2005年版)第10章。ガイドラインは改訂されることがあるため、最新版もあわせて確認してください。
シャントエコーで何を見るか
狭窄が疑われたら、シャントエコーで「どこが・どのくらい狭いか(形態)」と「シャント全体の血流がどのくらい落ちているか(機能)」を評価します。
| 評価 | 見る項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 機能評価 | 上腕動脈の血流量(FV)、血管抵抗指数(RI) | 狭窄が進むと、FVが下がり、RIが上がる。毎回同じ位置・条件で測ると経過を比べやすい |
| 形態評価 | 狭窄の位置、狭窄径(最も細い部分)、正常な部分の血管径、狭窄の長さ | 正常径は、狭窄のなるべく近くで、狭窄のない部分を測る |
| そのほか | 血栓・瘤・石灰化の有無、分岐や側副血行路 | 治療の方法や、ガイドワイヤーを通す経路を考える材料になる |
狭窄率(%) = (1 − 狭窄径 ÷ 正常径) × 100
例:正常な部分の血管径が6.0mm、最も細い部分が2.0mmなら、(1 − 2.0 ÷ 6.0) × 100 = 約67%。ガイドラインの「50%以上」に当てはまります。
エコーでの石灰化・血腫・血栓の見え方は、エコーガイド下穿刺の記事の「石灰化・血腫・神経はエコーでどう見える?」で図にしています。
PTAの適応の条件

ガイドラインの条件:狭窄率50%以上+臨床的な異常
日本透析医学会のガイドラインでは、狭窄の治療(PTAだけでなく外科的な治療も含む)の条件を、狭窄率が50%以上であり、次の臨床的・医学的な異常が1つ以上あることとしています。
- 血流の低下、瘤の形成
- 静脈圧の上昇
- BUNの異常な高値、または再循環率の上昇
- 予測できない透析量の低下
- 異常な身体所見
つまり、エコーで狭窄が見つかっただけでは治療の対象にならず、透析や身体所見に異常が出ているかどうかとあわせて判断する、ということです。
3か月以内にくり返すときの要件(診療報酬)
シャントのPTAには、いわゆる「3か月ルール」があります。2020年度の診療報酬改定では、前回の算定から3か月以内に行う場合でも、次のどちらかに当てはまれば算定できるとされました。
- シャントが閉塞している場合
- 超音波検査で、シャント血流量が400mL/分以下、または血管抵抗指数(RI)が0.6以上の場合
閉塞以外ではエコーでの機能評価が要件になったため、シャントエコーの重要性がさらに高まりました。診療報酬の要件は改定で変わることがあるので、最新の情報を確認してください。
PTAを行うかどうかは、医師が患者さんの状態を総合的に見て判断します。この記事の数値は、判断の材料を理解するための目安です。施設ごとの基準や手順に従ってください。
エコーガイド下PTAと造影下PTAの違い
PTAは、血管をどうやって映しながら行うかで、大きく2つに分けられます。X線透視と造影剤で血管を映す「造影下(透視下)PTA」と、エコーで血管を映す「エコーガイド下PTA」です。
| 項目 | エコーガイド下PTA | 造影下(透視下)PTA |
|---|---|---|
| 被ばく | なし | あり(患者さん・スタッフとも) |
| 造影剤 | 原則使わない | 使う(ヨード造影剤にアレルギーのある患者さんには使えない) |
| 見えるもの | 血管の壁・内腔・周りの組織。血管径をその場で測れる | 造影剤の流れ。シャント全体の走行を一度に見渡せる |
| 得意な場所 | 腕のシャントなど、皮膚に近い血管 | 中心静脈(鎖骨の下の静脈など)や、広い範囲の評価 |
| 苦手なこと | 骨や肺の奥にある中心静脈は見えにくい | 投影図なので、血管の壁の状態や正確な径は分かりにくいことがある |
| 実施場所 | 設備が整えば、透視装置のない部屋でも行える | 透視装置のある部屋が必要 |
ガイドラインでも、血管造影は「狭窄の程度や部位の診断、シャントの全体像の把握に最も適した方法」とされる一方、「あくまで投影図であること」「ヨード造影剤にアレルギーのある患者さんには使えないこと」に注意が必要とされています。腕のシャントの狭窄はエコーガイド下、中心静脈の狭窄が疑われる場合は造影下、というように、病変の場所や患者さんの状態で使い分けたり、両方を組み合わせたりする施設もあります。
PTAの流れ(一例)
事前の評価と準備
シャントエコーで狭窄の位置・径・長さを確認し、使うバルーンの太さや長さ、シースを入れる位置を決めます。拡張前のFV・RIもこのときに記録しておきます。
穿刺とシースの挿入
局所麻酔をしてから血管を穿刺し、シースを入れます。狭窄の場所によって、狭窄より中枢側から逆向きに入れることも、末梢側から順向きに入れることもあります。
ガイドワイヤーを狭窄部に通す
ガイドワイヤーが狭窄部(閉塞している場合は閉塞部)を通過すれば、多くの場合バルーンでの拡張ができます。通過しない場合は、外科的な治療を考えます。
バルーンでの拡張
バルーンを狭窄部に合わせてふくらませます。エコーガイド下では、狭窄部がくびれた形から広がっていく様子を画面で確認できます。拡張の圧や時間、使ったバルーンの種類と径は記録に残します。
拡張後の評価
残っている狭窄の程度を確認し、FV・RIを測り直して、治療前と比べます。
抜去と止血
シースを抜いて止血します。その後の透析のタイミングや穿刺部位は、施設と医師の指示に従います。
PTAバルーンの種類

| 種類 | 特徴 | 使われる場面の例 |
|---|---|---|
| ノンコンプライアントバルーン(高耐圧バルーン) | 高い圧をかけても大きさがほとんど変わらない | 硬い狭窄を、決めた径までしっかり広げたいとき |
| セミコンプライアントバルーン | 圧を上げると少しふくらむ。やわらかく、狭い部分を通しやすいものが多い | 細い狭窄で、先に小さめの径で広げたいとき(前拡張)など |
| カッティングバルーン・スコアリングバルーン | 表面の刃やワイヤーが狭窄部に切れ目を入れ、低い圧でも広がりやすくする | 通常のバルーンで広がりにくい強固な狭窄や、短期間で再狭窄したとき |
| 薬剤コーティングバルーン(DCB) | バルーンの表面の薬剤を、拡張と同時に血管の壁に届ける | 再狭窄をくり返す部位などで、再狭窄を減らす目的で |
バルーンの太さは、狭窄の近くにある正常な部分の血管径をもとに選ぶのが基本です。ガイドラインでは、グラフトと静脈の吻合部の狭窄には高圧バルーンを使い、強固な狭窄にはカッティングバルーンが推奨されるとしています。また、カッティングバルーンは、バルーンPTAから3か月以内に再び狭くなった場合にも推奨されています。
バルーン以外に、中心静脈の狭窄などではステント、グラフトの吻合部の狭窄などではステントグラフトが使われることもあります。どの道具を選ぶかは、病変の性質と医師の判断によります。
PTAのあとのフォロー
PTAで広げた部分は、時間がたつと再び狭くなる(再狭窄)ことがあります。そのため、治療したら終わりではなく、定期的に状態を確認していくことが大切です。
- 透析ごとの脱血の様子、静脈圧、止血時間の変化を記録する
- 定期的にシャントエコーでFV・RIを測り、治療直後の値と比べる
- 拡張した部位、バルーンの種類・径・圧を記録し、次の治療の計画に生かす
ガイドラインでは、3か月以内にPTAを2回以上必要とした場合は、外科的にシャントを作り直すことも選択肢として考えるべきだとされています。
PTAでのCEの関わり方
PTAで臨床工学技士がどこまで担当するかは、施設によって大きく違います。CEが関わることの多い場面には、次のようなものがあります。
- 透析中の静脈圧・脱血・止血時間など、狭窄を疑うきっかけになるデータの記録と報告
- 治療前後のシャントエコーでの評価(FV・RI・狭窄径の測定)
- エコーガイド下PTAでのプローブ操作と画像の描出
- バルーンなどの物品やインフレーター(加圧器)の準備、拡張の圧や時間の記録
現場から見た実感
狭窄は、ある日突然見つかるものではなく、静脈圧が少しずつ上がる、止血に時間がかかるようになる、といった小さな変化の積み重ねで見えてきます。毎回の透析の記録とシャントエコーの数値を同じ形で残しておくと、「いつから変わったか」がはっきりして、医師に相談するときの説得力も変わります。PTAそのものは医師の治療ですが、そのきっかけを作れるのは、毎日シャントを見ている透析室のスタッフだと感じています。
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まとめ
PTAは、狭くなったシャントの血管をバルーンで広げる治療です。日本透析医学会のガイドラインでは、狭窄率50%以上で、脱血不良や静脈圧の上昇などの臨床的な異常が1つ以上あることが治療の条件とされています。前回の治療から3か月以内の場合は、エコーでの血流量400mL/分以下、またはRI 0.6以上などが算定の要件です。エコーガイド下PTAは被ばくや造影剤がなく、造影下PTAはシャント全体や中心静脈まで見渡せるという特徴があり、病変の場所によって使い分けられています。日々の観察とシャントエコーの記録が、適切なタイミングでの治療につながります。
よくある質問
PTAは痛いですか?
シースを入れる部分には局所麻酔をします。バルーンをふくらませるときに痛みを感じる患者さんもいるため、痛みへの対応は施設ごとに工夫されています。
PTAは入院が必要ですか?
施設や患者さんの状態によります。外来で行い、その日のうちに帰宅できる施設もあれば、入院して行う施設もあります。
PTAは何回でもできますか?
くり返し行うことはできますが、短い間隔で再狭窄をくり返す場合は、バルーンの種類を変えたり、外科的にシャントを作り直したりすることも検討されます。
エコーで狭窄が見つかったら、すぐにPTAをしますか?
エコーで狭窄が見つかっただけでは、すぐに治療するとは限りません。透析中の脱血や静脈圧、身体所見などに異常があるかとあわせて、医師が判断します。
参考資料
- 日本透析医学会「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」(2005年版)第10章 バスキュラーアクセスの修復の時期と方針
- 令和2年度(2020年度)診療報酬改定 シャントPTAの算定要件(3か月以内の実施)


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