臨床工学技士という資格そのものが、実はまだ歴史の浅い職種だということをご存知でしょうか。今回は、年収の「変遷」を歴史的な背景とあわせて整理してみます。
そもそも臨床工学技士がどんな資格・仕事なのかは臨床工学技士とはで詳しく解説しています。
臨床工学技士という資格の誕生(1987年)
臨床工学技士法は1987年(昭和62年)に公布され、翌1988年(昭和63年)に施行、第1回の国家試験が実施されました。つまり、この資格自体がまだ40年に届かない、比較的新しい国家資格です。
もともとこの資格は、それまで無資格のまま透析業務や体外循環業務、人工呼吸器の取り扱いを担っていた技術者を、正式な国家資格として位置づけるために作られたという経緯があります。資格ができる前は「専門職としての給与水準」という概念自体が確立していなかった、というのが実態に近いと思います。
資格制度が若いことによる構造的な事情
臨床工学技士は資格制度の歴史が浅く、業界全体の平均年齢が他の医療職と比べて若い傾向にあります。平均年収の統計は年齢構成の影響を強く受けるため、「同じ年齢・同じ勤続年数」で比較すれば他職種との差は縮まる、という指摘もあります。つまり、統計上の平均年収が低く見えるのは、給与水準そのものが低いというより、若い世代が多い職種であることの影響も大きい、ということです。
2021年、業務範囲が拡大された転機
2021年10月、改正臨床工学技士法が施行され、業務範囲が追加されました。血液浄化装置の穿刺針の血管への接続・抜去など、それまで医師や看護師が担っていた一部の業務を臨床工学技士が行えるようになったのです。これは「医師の働き方改革」の一環としてのタスクシフトが背景にあり、臨床工学技士という職種の専門性・必要性が、法制度の上でも改めて認められた出来事だと感じています。
業務範囲の拡大は、資格の価値そのものを底上げする動きであり、中長期的には待遇面にもプラスに働くと期待している技士は少なくありません。
直近数年の年収の動き

厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとにしたjob tagのデータを見ると、令和4年調査では443.3万円、令和6年調査ではおよそ430万円、最新の令和7年調査では454.2万円と、年によって10〜20万円単位で上下しながらも、大きく崩れることなく推移しています。2022年以降は、物価上昇や賃上げの流れ、最低賃金の引き上げも、緩やかな上昇要因になっていると考えられます。
年代別に見ると、若い世代の多さが平均を押し下げている
令和7年の調査を年代別に見ると、20代前半で約334万円、30代前半で約443万円、40代後半で約543万円と、年齢とともにしっかり上がっています。それでも全体の平均が454.2万円にとどまるのは、平均年齢が37.6歳と、他のコメディカル職より若いことが大きな理由です。詳しくは年代・経験年数別の年収で解説しています。
| 職種 | 平均年収 | 平均年齢 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 診療放射線技師 | 556.5万円 | 41.1歳 | 1.07倍 |
| 臨床検査技師 | 482万円 | 40.2歳 | 1.50倍 |
| 臨床工学技士 | 454.2万円 | 37.6歳 | 1.73倍 |
| 理学療法士 | 443.6万円 | 36.2歳 | 4.67倍 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)。年収・年齢は令和7年賃金構造基本統計調査、有効求人倍率は令和7年度ハローワーク求人統計をもとに作成されたもの。
2024年の診療報酬改定と賃上げ
2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを目的とした「ベースアップ評価料」が新設されました。看護師や臨床工学技士などの医療職の基本給を引き上げた医療機関が算定できる仕組みで、国として医療職の賃金を底上げしようという流れがはっきりしてきています。実際にどれだけ給与に反映されるかは施設によって異なりますが、年収の推移を考えるうえで押さえておきたい動きです。
正直に言うと:20〜30年前の正確なデータは見つかりませんでした
この記事を書くにあたり、10年以上前の臨床工学技士に特化した年収データを探しましたが、信頼できる統計として公開されているものは見つけられませんでした。資格自体の歴史が浅いことに加え、統計調査で独立した職種区分として継続的に追跡されるようになったのも比較的最近だと考えられます。根拠のない数字を書くよりは、分かっている事実(資格の歴史、法改正、直近数年のデータ)を正直にお伝えする方が誠実だと考え、このような構成にしました。
今後の年収に影響しそうな要因
今後の年収に影響を与えそうな要因として、業務範囲拡大の継続に加えて、AI・プログラム医療機器の普及も無視できないと考えています。AI搭載機器を扱える・その仕組みを理解しているCEの需要が高まれば、専門性の評価軸がもう一段増えることになります。詳しくはAIスキルを持つ臨床工学技士は市場価値が上がるかで書いていますが、資格の歴史がまだ浅いこの職種にとって、新しい専門性を早めに身につけておくことは、統計上の平均を超えていくための現実的な手段の一つだと感じています。
転職を考えている人へ
今の年収が相場と比べてどうか、確かめてみませんか
年収の推移を知ったうえで、自分が相場より低いかどうかは、求人と比べてみるのがいちばん確実です。転職エージェントなら、手当や賞与の実績まで含めて比べられます。
まとめ
臨床工学技士の年収は、資格自体の若さゆえに統計的な蓄積が浅く、劇的な右肩上がりのグラフを描けるような職種ではありません。ただし、2021年の業務範囲拡大に代表されるように、専門性が制度的に認められる方向へ着実に進んでいる職種でもあります。今後、資格の認知度が上がり、業務範囲がさらに広がっていけば、待遇面にも反映されていく可能性は十分にあると考えています。
よくある質問
Q. 今後さらに給料は上がっていく?
A. 断言はできませんが、業務範囲の拡大が続いている以上、専門性の評価が待遇に反映されていく可能性はあると考えています。
Q. 業務範囲拡大で忙しくなった?
A. できることが増えた分、任される場面は増えています。ただそれは「必要とされている」ことの裏返しでもあります。
Q. 若いうちに転職しておくべき?
A. 年収データを見る限り、施設規模の影響が大きいので、早い段階で大きい施設の経験を積んでおくのは選択肢として悪くないと思います。
Q. 他のコメディカル職種と比べて年収の伸び方に違いはある?
A. 看護師や臨床検査技師など歴史の長い職種と比べると、統計の蓄積年数自体が違うため単純比較は難しいです。ただ業務範囲拡大が続いている点は、他のコメディカル職種と比べても近年動きが大きい部分だと感じています。
Q. AIの普及は年収にどう影響しますか?
A. まだ確定的なことは言えませんが、AI・プログラム医療機器を理解し使いこなせる人材への需要は今後高まると見ています。早いうちからこの領域の知識を持っておくことは、将来の選択肢を広げる意味で有効だと考えています。


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