「臨床工学技士って実際どんな1日を過ごしているの?」という疑問に答えるため、透析室勤務時の典型的な1日の流れを紹介します。これから臨床工学技士を目指す方や、転職を検討している方の参考になればと思います。
そもそも臨床工学技士がどんな仕事か気になる方は、先に臨床工学技士とはを読んでおくと内容がつかみやすいと思います。
朝(始業〜午前の透析)
- 始業前に装置(透析用監視装置、水処理装置など)の始業点検を行う
- 透析液の濃度・水質を確認する
- 患者さんの受け入れ、穿刺の準備・補助
- 透析開始後は、複数の患者さんのバイタルサイン・除水量を並行してチェック
昼(交代・記録・トラブル対応)
- 午前の透析終了、返血・抜針の対応
- 装置の後始末、次の患者さんに向けた準備
- 午前の記録をまとめ、必要に応じて看護師・医師と情報共有
- 装置トラブルが発生した場合はここで対応することが多い
午後(2クール目の透析、事務作業)
- 午後の透析患者さんの受け入れ、朝と同様の流れを繰り返す
- 並行して、機器の定期点検・修理対応、消耗品の在庫管理などの事務的な業務を行う
- 新人・後輩への指導やOJTもこの時間帯に行うことが多い
夕方(終業前)
- 最終便の透析終了、装置の洗浄・消毒
- 翌日の準備、引き継ぎ事項の整理
1日を通して感じること
透析室の臨床工学技士の仕事は、「装置を管理する仕事」というイメージを持たれがちですが、実際には患者さんの状態を見ながら判断する場面が非常に多い仕事です。機械の知識と、人を相手にする感覚の両方が求められる、というのが10年働いて感じる実感です。
次の記事以降では、こうした経験を踏まえたキャリアの選択肢についても書いていく予定です。
1日の中で特に神経を使う瞬間
1日の流れの中でも、特に集中力が求められるのは「穿刺・返血のタイミング」と「複数患者のバイタルを同時に見ている時間帯」です。透析中は15〜30分おきを目安に血圧・除水状況を確認しますが、担当する患者さんが多い日は、この確認作業を並行してこなしながら異常の兆候を見逃さないようにする必要があります。装置のアラームが同時に鳴ることもあり、優先順位の判断力が問われる場面です。
現場から見た実感
1日の中で一番忙しいのは、午前の透析の返血・回収と、午後の透析の開始が重なるタイミングです。午前の患者さんを送り出しながら、次の患者さんの穿刺と開始を進めるので、手が何本あっても足りない感覚になります。特にゴールデンウィークや年末年始など、祝日が続いてスタッフの人数が少ない日は、この時間帯の負担がかなり大きくなります。
トラブルと急変への備え
透析室で起こるトラブルの多くは、装置に関するものです。その場で解消できないトラブルは、治療を安全に終えて回収したあと、自分たちでメンテナンスをするか、メーカーの業者に対応を依頼します。
装置のトラブルとは別に、患者さんの急変もあります。気分不良のような軽いものから、意識レベルの低下、心肺停止といった重いものまでさまざまですが、頻繁に起こるものではありません。
透析装置の即時返血や、胸骨圧迫・バッグバルブマスク・AEDなどの一次救命処置(BLS)、急変時の役割分担については、透析中の急変・心肺停止への対応で詳しくまとめています。
外来中心の施設ほど、事前の知識が大切
外来の患者さんが中心の病院やクリニックでは、急変に対応する回数そのものが少なくなります。そのため、いざというときに慌てないよう、急変時の対応を知識として事前に身につけておく必要があります。
教えてくれる施設ばかりではない
急変時の対応を、勉強会などできちんと教えていない施設も少なくありません。自分から学ぶ姿勢が必要ですし、職場を選ぶときは、急変時の対応や教育の体制を確認しておくと安心です。
施設によって変わる1日の流れ
ここで紹介したのはあくまで一般的なクリニック・透析室の例です。大規模病院の透析センターでは、専属のCEチームで役割分担(穿刺担当、記録担当、機器管理担当など)が明確に分かれていることもあります。逆に小規模クリニックでは、CEが受付対応や物品発注まで幅広く担うケースもあり、施設の規模によって1日の忙しさの質はかなり変わってきます。見学や面接の際は、実際の1日の流れを具体的に質問してみることをおすすめします。
タイムスケジュールの一例

午前・午後の2クール制の透析室を例に、1日の流れを時刻で並べると次のようになります。施設によって開始時刻や人数は異なるので、あくまで一例としてご覧ください。
| 時間 | 主な業務 |
|---|---|
| 7:30〜8:00 | 出勤、水処理装置・透析用監視装置の始業点検、透析液の濃度確認 |
| 8:00〜8:30 | 回路の組み立て・プライミング、当日の透析条件の確認 |
| 8:30〜9:30 | 患者さんの入室、体重測定、穿刺・透析開始 |
| 9:30〜12:30 | 透析中の観察(血圧・除水・回路内圧)、アラーム対応、記録 |
| 12:30〜13:30 | 返血・抜針、止血確認、装置の片付け・次の準備 |
| 13:30〜14:00 | 交代で昼休憩 |
| 14:00〜18:30 | 午後クールの透析(準備・開始・観察・終了) |
| 18:30〜19:00 | 装置の洗浄・消毒、記録の整理、翌日の準備 |
夜間透析がある施設の場合
仕事帰りの患者さん向けに、夕方から夜にかけて3クール目(夜間透析)を行う施設もあります。その場合は、早番・遅番のシフト制になっていることが多く、遅番は昼ごろに出勤して夜間透析の終了まで担当します。夜間透析がある職場を検討する場合は、遅番の頻度と終業時刻を確認しておくと安心です。
月単位・年単位で入ってくる業務
毎日の透析とは別に、定期的に回ってくる業務もあります。1日の流れだけでは見えにくい部分ですが、CEの専門性が特に問われる仕事です。
透析用水・透析液のエンドトキシンや生菌数を定期的に測定し、水質基準を満たしているかを確認します。水処理の仕組みは透析用水の記事で解説しています。
透析用監視装置や水処理装置の部品交換、性能確認などを計画的に行います。
ダイアライザや回路、穿刺針などの消耗品の発注と在庫の確認。欠品は治療に直結するので気が抜けません。
院内の勉強会や学会への参加。透析技術認定士の更新にも学会参加などの単位が必要です。
1日をうまく回すためのコツ
- 開始前の準備で8割が決まる:回路の組み立てと条件確認を前倒しで終わらせておくと、開始時間帯の混雑に余裕が生まれます
- 「悪化傾向」の患者さんから確認する:前回血圧が下がった人、体重増加が多い人を優先して見ると、異常の早期発見につながります
- アラームの原因を記録しておく:同じ装置・同じ患者さんで繰り返すアラームは、回路やシャントの問題のサインであることがあります
- 返血の時間をずらす:全員の終了が重ならないよう開始時刻を少しずつずらすと、終了時の負担が分散します
透析室で使う靴やポーチなど、1日を快適に過ごすための道具は医療従事者におすすめの仕事道具にまとめています。
転職を考えている人へ
1日の流れは施設によって大きく違います
2クールか3クールか、夜間透析や当直があるか。働き方の合う職場を探すなら、施設ごとの勤務の実態を聞ける転職エージェントが便利です。日程調整も任せられるので、シフト勤務のままでも進めやすくなります。
よくある質問
Q. 休憩はしっかり取れる?
A. 施設や忙しさによりますが、透析室は患者さんの透析時間中に手が空く時間帯があるので、そこで交代で休憩を取ることが多いです。
Q. 残業は多い?
A. 透析室は治療の終了時間がある程度決まっているので、病院の他部署(手術室など)と比べると残業は少なめな傾向があります。ただ機器トラブル対応が長引くと残業になることもあります。
Q. 土日は休める?
A. 透析クリニックは日曜休診が多いですが、土曜診療がある施設も多いです。完全週休2日かどうかは施設ごとに確認が必要です。
Q. 1人あたり何人くらいの患者を担当しますか?
A. 施設の規模や人員配置によりますが、1クールあたり4〜6名程度を担当することが多い印象です。忙しさの感じ方は担当人数だけでなく、患者さんの状態(急変リスクの高い方が多いかどうか)にも左右されます。
Q. 大規模病院とクリニックで1日の流れは違いますか?
A. 大きく違います。大規模病院は役割分担が明確な分、専門性を深めやすい一方、クリニックは幅広い業務を1人で担う分、色々な経験を積みやすい傾向があります。どちらが合うかは本人の志向によります。


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