臨床工学技士の年収について、実際のデータと自分の経験をもとに書いてみます。
そもそも臨床工学技士がどんな仕事か気になる方は、先に臨床工学技士とはを読んでおくと内容がつかみやすいと思います。
公的データで見る平均年収

厚生労働省の職業情報サイト「job tag」によると、臨床工学技士の平均年収はおよそ454.2万円(令和7年賃金構造基本統計調査ベース、平均年齢37.6歳)。前年の調査(約430万円)からは上がっていますが、全産業平均と比べるとやや低めの水準です。
病院で働く主なコメディカル職と比べると、次のようになります。
| 職種 | 平均年収 | 平均年齢 | 有効求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 診療放射線技師 | 556.5万円 | 41.1歳 | 1.07倍 |
| 臨床検査技師 | 482万円 | 40.2歳 | 1.50倍 |
| 臨床工学技士 | 454.2万円 | 37.6歳 | 1.73倍 |
| 理学療法士 | 443.6万円 | 36.2歳 | 4.67倍 |
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)。年収・年齢は令和7年賃金構造基本統計調査、有効求人倍率は令和7年度ハローワーク求人統計をもとに作成されたもの。
事業所の規模によって差が大きいのも特徴で、令和6年の調査では
- 従業員5〜9人程度の小規模施設: 平均319万円ほど
- 従業員1,000人以上の大規模施設: 平均497万円ほど
という報告があります。同じ臨床工学技士でも、勤務先の規模で150万円以上の差が出ることになります。
透析室勤務の場合
透析室は、他の部門(手術室・ME機器管理室など)と比べて夜勤や当直が少ない施設も多く、その分、時間外手当や当直手当が年収に占める割合は低くなりがちです。一方で、土曜診療やオンコール対応がある施設だと、その分の手当が上乗せされることもあります。
年収を上げるために実際に有効だったこと
- 専門資格(透析技術認定士など)の取得
- 規模の大きい施設・給与水準の高い施設への転職
- 医療機器メーカーなど、CE資格を活かした異業種への転換
特に「規模の大きい施設への転職」は、上記の公的データが示す通り、年収の差に直結しやすいポイントです。
ボーナス・退職金の実情
基本給や手当だけでなく、賞与(ボーナス)と退職金の有無も、年収の実感を大きく左右します。公的病院や大規模な医療法人では年2回の賞与が基本給の3〜4ヶ月分程度出るところもある一方、クリニックや小規模施設では賞与そのものが少額、あるいは業績連動で年によってばらつくところもあります。退職金制度も同様で、公的病院は退職金規程が整っていることが多いですが、法人・施設によって差があるため、求人票の「賞与」「退職金」の欄は基本給以上にしっかり確認しておくべきポイントです。
求人票の年収例は「基本給+諸手当」の合計であることが多く、賞与の月数や退職金の有無まで含めた実質的な年収感とは差が出ることがあります。面接や職場見学の場で遠慮なく確認しておくのがおすすめです。
手当の内訳:現場で見てきた実例
臨床工学技士の年収は、基本給よりも「どの手当がいくらつくか」で差がつきやすい仕事です。自分がこれまで働いてきた施設や、見聞きしてきた施設での手当の目安をまとめると、次のようになります。
| 手当 | 金額の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 透析手当 | 1万〜3万円程度 | 透析室で働くことに対する手当。施設による差が大きい |
| 資格手当 | 1万円前後 | 臨床工学技士の資格に対する手当 |
| 認定士などの手当 | 施設による | 透析技術認定士などの手当は、ある施設とない施設がある |
| 夜勤手当 | 1万円程度 | 夜勤1回あたりの目安 |
| 準夜勤手当 | 3,000円程度 | 夕方から夜にかけての勤務に対する手当 |
| 早出手当 | 1,000円前後 | 早番で早く出勤した日の手当 |
| 祝日手当 | 500〜1,000円 | 祝日に勤務した日の手当 |
※筆者が見てきた施設での目安です。手当の名前・金額・支給の条件は施設によって大きく異なります。
ひとつひとつは小さな金額でも、透析手当と資格手当だけで月に2万〜4万円ほどの差になります。転職で基本給が上がっても、透析手当がない施設に移ると、結果として給料が大きく下がることもあります。求人票を見るときは、基本給だけでなく、手当の種類と金額まで確認しておくのがおすすめです。
病気やけがで休んだときの収入や医療費を支える公的な制度については、医療従事者が知っておきたい公的保障でまとめています。
年収に合わせたふるさと納税の上限額の目安は、医療従事者のふるさと納税入門で紹介しています。
年収が伸び悩みやすいパターン
逆に、年収が上がりにくいと感じるパターンにも共通点があります。ひとつは、資格手当や役職手当の制度自体がない施設に長く勤め続けるケース。もうひとつは、同じ施設・同じ業務内容のまま昇給のタイミングを待ち続けるケースです。CEは資格職である分、専門資格の取得や役職への昇格といった「分かりやすい節目」がないと、給与テーブルがなかなか動かない施設も少なくありません。
現場から見た実感
手当の内容は、本当に施設によって色々です。転職して基本給は上がったのに手当が減って、トータルでは大幅に下がってしまった、という話も聞きます。自分の場合は転職で給料が3万円ほど増えましたが、それは基本給だけでなく、手当の内訳まで比べて選んだからだと思っています。「今の施設にいながら年収を上げる」選択肢と「転職して年収を上げる」選択肢、どちらも有効ですが、まずは今の給与明細の手当の内訳を一度見直してみることをおすすめします。
求人票で必ず確認したい項目
年収は「基本給」だけでは比べられません。求人票や面接で、次の項目を確認しておくと、入職後のギャップを減らせます。
| 項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 基本給 | 資格手当などを除いた金額か。賞与や退職金の計算の基準になる |
| 手当 | 透析手当・資格手当・夜勤や当直の手当があるか、それぞれいくらか |
| 賞与 | 年何回・何か月分か。前年の支給実績も聞いておく |
| 昇給 | 年1回か、どのくらい上がるか、役職や資格で上がる仕組みがあるか |
| 退職金 | 制度の有無と、何年勤めると対象になるか |
| 勤務の条件 | 夜間透析・オンコール・土曜勤務の有無と頻度 |
年収の内訳の考え方(例)
同じ「月給30万円」でも、内訳によって年収は大きく変わります。たとえば次のような例で考えてみます。
| 内訳 | Aさん | Bさん |
|---|---|---|
| 基本給 | 25万円 | 22万円 |
| 透析手当・資格手当 | 3万円 | 2万円 |
| 夜勤・当直などの手当 | 2万円 | 6万円 |
| 月給の合計 | 30万円 | 30万円 |
| 賞与(基本給の4か月分) | 100万円 | 88万円 |
| 年収 | 460万円 | 448万円 |
※計算をわかりやすくするための例です。実際の金額や賞与の計算方法は施設によって異なります。
賞与が「基本給の何か月分」で決まる施設では、手当が多くても基本給が低いと、年収の差が開きます。また、夜勤や当直の手当は回数によって変わるので、「毎月確実にもらえる部分」と「変わる部分」を分けて考えるのがおすすめです。年収に合わせたふるさと納税の上限の目安は医療従事者のふるさと納税入門でまとめています。
転職を考えている人へ
年収を上げたいなら、手当と賞与まで比べられる環境で
同じ月給でも、透析手当・夜勤手当・賞与の月数で年収は数十万円変わります。転職エージェントを使うと、求人票に書かれていない手当の中身や賞与の実績まで確認してもらえます。自分で探す転職との違いやメリットをまとめました。
まとめ
臨床工学技士の年収は、全産業平均と比べると高いとは言えないのが実情です。ただし、勤務先の規模や勤務形態、保有資格によって差が大きく出る仕事でもあります。次の記事では、実際の仕事内容や忙しさについても書いていく予定です。
よくある質問
Q. 経験10年で年収はどれくらいになる?
A. 施設の規模や地域差はありますが、経験10年前後であれば400万円台に乗ってくるのが一般的な感覚です。ただ本文で触れた通り、施設規模による差(150万円以上)の方が経験年数の影響より大きいこともあります。
Q. 資格を取れば必ず年収は上がる?
A. 資格手当がつく施設であれば上がりますが、資格が手当に直結しない施設もあります。転職や資格取得を考える前に、今の施設の資格手当の有無を確認しておくことをおすすめします。
Q. 夜勤がないと年収は頭打ちになる?
A. 夜勤・当直手当がない分、統計上の年収は低めに出やすいのは事実です。ただ透析室勤務のように専門資格手当で補える働き方もあるので、「夜勤なし=低収入」と単純に決めつけない方がいいと思います。
Q. 賞与が少ない施設は避けた方がいい?
A. 賞与の水準だけで判断するのではなく、基本給とのバランスで見るのが実務的です。基本給が高めで賞与が低い施設もあれば、その逆もあります。年収の総額でどのくらいになるかを求人票や面接で必ず確認しましょう。
Q. 転職エージェントに相談するタイミングは?
A. 「今すぐ転職したい」段階でなくても、市場の相場観を知る目的で早めに相談してしまって問題ありません。実際の年収相場や、今の施設の待遇が水準としてどのあたりかを客観的に把握できるだけでも、今後のキャリアの判断材料になります。
Q. 手取りは年収のどのくらいになりますか?
A. 税金や社会保険料が引かれるため、手取りは額面のおよそ75〜85%程度になることが多いです。家族構成や住んでいる地域、加入している保険などによって変わるので、正確な金額は給与明細で確認してください。

コメント