シャントとは?血管走行と穿刺の基本をCEが解説

シャントとは?血管走行と穿刺の基本をCEが解説 透析の基礎知識

※本記事はPRを含みます。

CE基礎知識

透析治療において、シャントは「生命線」とよく言われます。どれだけ装置や膜が優れていても、血液を体外に取り出す入口がなければ治療は成立しません。今回は、シャントの仕組みから血管走行の考え方、そして実際の穿刺の基本まで、まとめて詳しく解説します。

そもそも臨床工学技士がどんな仕事か知りたい方は臨床工学技士とはもどうぞ。

なぜシャントが必要なのか

透析では、1分間に150〜250ml程度という、通常の採血とは比較にならない量の血液を体外に取り出し、また体内に戻す必要があります。通常の静脈は血流が緩やかで内腔も細いため、このペースでの脱血には耐えられません。そこで、動脈と静脈を直接つなぎ合わせることで、静脈に動脈並みの血流量と血管の強度を持たせる「シャント」という血管を人工的に作ります。

シャントの種類:AVFとAVG

AVF(自己血管内シャント)

自分の動脈と静脈を直接吻合する方法。感染や閉塞のリスクが比較的低く、最初に選択されることが多い。

AVG(人工血管内シャント)

自己血管が細い・弱いなどの理由で使えない場合に、人工血管を移植して動脈と静脈をつなぐ方法。

その他のアクセス

シャントが作れない場合は、カフ型カテーテルなど別の血管アクセスが選択されることもある。

血管走行の基本パターン

シャントを作成する部位は、基本的に「末梢から中枢へ」段階的に選んでいきます。最初に選択されることが多いのは、手首付近の橈骨動脈と橈側皮静脈をつなぐ「手関節部内シャント」です。この部位が使えなくなった場合、前腕正中皮静脈を使うタイプ、さらに肘部の上腕動脈を使うタイプへと、より中枢側・太い血管を使う方法へ移行していきます。

吻合部 静脈側(シャント血管) 動脈側 手関節部シャントの模式図(橈骨動脈-橈側皮静脈)

図: 動脈と静脈を吻合(つなぎ合わせる)ことで、静脈側に強い血流を作る仕組み

シャントの状態確認:視診・触診・聴診

シャントが正常に機能しているかどうかは、毎回の透析前に確認します。基本は「視診・触診・聴診」の3ステップです。

1

視診

皮膚の色・腫れ・発赤、血管瘤(こぶ)の有無、感染のサインがないかを目で確認する。

2

触診

シャント血管に軽く触れ、連続した振動(スリル)が感じられるかを確認する。スリルが弱い・触れない場合は狭窄や閉塞のサイン。

3

聴診

聴診器で血流音(シャント音)を確認する。連続性のある「ゴーゴー」という音が正常で、途切れる・高調性に変化する場合は注意が必要。

穿刺の基本:2本の針の役割

透析の穿刺では、通常2本の針を使います。1本は血液を体外に取り出す「脱血側(動脈側)」、もう1本は浄化した血液を体内に戻す「返血側(静脈側)」です。この2本の位置関係と向きには、治療効率と安全性を守るための基本ルールがあります。

血流方向 → 脱血針 返血針 脱血針と返血針の間には十分な距離を取り、再循環を防ぐ

図: 血流方向に対する脱血針・返血針の位置関係のイメージ

針の向きは、血流と同じ向き(中枢側=体の中心側に向けて)に刺す「順穿刺(順行性穿刺)」が基本です。ただし脱血針は、血管の走行や、中枢側に狭窄がある場合などには、血流に逆らう向きに刺す「逆穿刺(逆行性穿刺)」を選ぶことがあります。逆穿刺をしてよいのは脱血針だけで、返血針は必ず順穿刺です。そのうえで、返血針は脱血針より中枢側に十分な距離を取って刺し、返した血液がすぐに脱血側に混ざり込む「再循環」が起きないようにします。再循環が起きると、実際には十分に浄化されていない血液を再び取り出してしまうことになり、透析効率が下がってしまいます。

穿刺部位のローテーションが重要な理由

毎回同じ場所に穿刺を繰り返すと、その部分の血管壁が弱くなり、血管瘤(こぶ)ができやすくなります。血管瘤は破裂のリスクや、感染のリスクを高めるため、穿刺部位は少しずつ位置を変えていく「ローテーション」が基本になります。逆に、毎回穿刺位置をランダムに大きく変える「バラバラ穿刺」も血管を傷つけやすいとされ、一定の範囲内でずらしていく方法が推奨されています。

AVF(自己血管)
AVG(人工血管)
視診・触診・聴診
脱血針・返血針
穿刺部位のローテーション
たく

現場から見た実感

穿刺は、教科書の基本ルールを覚えるところまでは誰でもできますが、実際の血管は弾力・深さ・蛇行の仕方が本当に一人ひとり違います。同じ患者さんでもその日の体調(血圧、体液量)によって血管の張り方が変わることもあり、「毎回同じようにいくわけではない」という前提を持てるようになったのは、かなり場数を踏んでからでした。

穿刺に伴う代表的なトラブル

穿刺関連のトラブルとしては、血管を貫いてしまう「穿通」、血管外に血液が漏れる「血腫」、そして繰り返しの穿刺による血管瘤や、シャント自体の狭窄・閉塞などがあります。これらのリスクを減らすためにも、視診・触診・聴診による事前評価と、無理に力任せで穿刺しない判断が重要になります。難しいと感じた場合は、早めに先輩や別のスタッフに交代を相談する判断も、シャントを長く守るための大切なスキルの一つです。

シャントを作ってから使い始めるまで

自己血管内シャント(AVF)は、作ってすぐには使えません。動脈の強い血流が流れ込むことで静脈が太く、壁が厚くなり、穿刺に耐えられる状態に育つまで時間がかかります。これを「シャントの成熟」と呼びます。一般的には数週間ほど待ってから穿刺を始めますが、血管の発達の具合を見ながら判断します。人工血管内シャント(AVG)は、人工血管の種類によって穿刺を始められる時期が異なり、早くから使えるタイプもあります。

シャントを作る前の段階から、腕の静脈を採血や点滴で傷つけないようにしておくことも大切です。将来シャントを作る可能性のある腕の血管は、できるだけ温存します。

シャントの主な合併症

合併症 どんな状態か 気づくためのサイン
狭窄 血管の一部が細くなる シャント音が高く断続的になる、静脈圧の上昇、脱血不良
閉塞 血栓などで血流が止まる スリル・シャント音が消える
感染 穿刺部などから細菌が入る 発赤・腫れ・熱感・痛み・膿。AVGでは特に注意
瘤(こぶ) 血管の一部が膨らむ 皮膚が薄く光沢がある瘤は破裂の危険があり要注意
スチール症候群 手先へ行く血液がシャントに奪われる 手指の冷感・しびれ・痛み
静脈高血圧 中枢側の狭窄などで静脈の圧が上がる 腕や手のむくみ
過剰血流 シャントの血流が多すぎる 心臓への負担が増え、心不全の原因になることがある

シャントの機能を数字で見る:モニタリング

視診・触診・聴診に加えて、透析中のデータやエコーを使ってシャントの状態を客観的に評価することを「VAモニタリング」と呼びます。

静脈圧

返血側の圧力。いつもより高い状態が続くときは、返血側より先の狭窄を疑う。

脱血状況

設定した血液流量が取れない、脱血側の圧が強い陰圧になる場合は、脱血側の狭窄や穿刺位置の問題を考える。

再循環率

返血した血液が再び脱血されている割合。高いと透析効率が落ちる。

エコー(FV・RI)

上腕動脈の血流量(FV)と血管抵抗指数(RI)で、シャント全体の機能を評価する。詳しくはエコーの記事で解説。

狭窄が見つかったときの治療(PTA)の流れや適応の条件は、シャントのPTAとはで解説しています。

患者さんに伝えたいシャントの自己管理

  • 毎日、シャントに触れてスリル(振動)を確認する。いつもと違う、感じられないときはすぐに連絡する
  • シャント側の腕で血圧を測らない、重い荷物を持たない、腕時計やきつい袖で締めつけない
  • 腕枕をしない、シャント側を下にして長時間寝ない
  • 穿刺部を清潔に保ち、赤み・腫れ・痛みがあれば早めに伝える
  • 脱水はシャント閉塞のきっかけになるため、体調不良で食事や水分がとれないときも相談する
理解度チェックに

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シャント音の聴き方のコツ

1

吻合部から中枢へ順に聴く

吻合部の近くから、腕の付け根に向かって、数か所に分けて聴診器を当てます。場所によって音が変わるので、毎回同じ順番で聴くと変化に気づきやすくなります。

2

音の「高さ」と「続き方」を聴く

正常なシャント音は、低めの音が途切れずに続く「ザーザー」「ゴーゴー」という音です。高い音に変わる、音が途切れる(拍動のように聞こえる)、「ヒュー」という細い音が混ざる場合は、狭窄を疑います。

3

いつもの音と比べる

シャント音は患者さんごとに違います。大切なのは「その患者さんのいつもの音」と比べることです。気づいた変化は、日付と場所を添えて記録し、チームで共有します。

スリル(振動)の触り方

指先をそっとシャントの上に当てて、ザワザワとした連続した振動を確かめます。強く押すと血流を妨げてしまうので、軽く触れるのがポイントです。スリルが弱くなった、触れる範囲が短くなった、拍動だけが強く触れる、といった変化は、狭窄や閉塞のサインのことがあります。

AVG(人工血管)ならではの注意点

感染に特に注意

人工血管は異物なので、感染すると治りにくく、取り出す手術が必要になることもあります。穿刺前の消毒を丁寧に行い、発赤や腫れがないかを毎回確認します。

穿刺部の偏りを避ける

同じ場所に穿刺を繰り返すと、人工血管が傷んで瘤や出血の原因になります。穿刺部位を少しずつずらして使います。

静脈側の吻合部の狭窄

AVGでは、人工血管と静脈をつないだ部分の近くに狭窄が起こりやすいと言われています。静脈圧の変化に注意します。

止血に時間がかかることも

止血しにくいときも、強く押しすぎると閉塞の原因になります。スリルを感じられる程度の力で、時間をかけて止血します。

シャントを長持ちさせるためにCEができること

  • 毎回の評価を記録して比べる:シャント音・スリル・静脈圧・脱血状況を記録し、小さな変化をチームで共有する
  • 穿刺の情報を引き継ぐ:血管の深さや走行、刺しにくい部分などを記録に残し、誰が刺しても同じように穿刺できるようにする
  • エコーで定期的に評価する:数値と画像で狭窄の進み具合を確認し、治療のタイミングを逃さない(エコーガイド下穿刺・PTAの記事)
  • 患者さんの自己管理を支える:毎日のスリルの確認や、シャント側の腕を圧迫しない生活を、わかりやすく伝える

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シャントの観察や穿刺は、本で基本を押さえてから現場で経験を重ねると上達が早くなります。シャントエコーと穿刺を学べる本を紹介します。

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まとめ

シャントは、動脈と静脈をつなぐことで透析に必要な血流を確保する仕組みであり、その血管走行と状態を正しく評価できるかどうかが、安全な穿刺の土台になります。視診・触診・聴診による評価、血流方向に沿った針の配置、そして穿刺部位のローテーションという基本原則を押さえることが、シャントを長く使い続けるための第一歩です。次は、この穿刺をより安全に行うための「エコーガイド下穿刺」について解説します。

よくある質問

Q

シャントが使えなくなったらどうなりますか?

血管造影などで状態を確認し、狭窄している場合は血管拡張術(PTA)で治療することもあります。それでも使えない場合は、別の部位に新たにシャントを作成することになります。

Q

穿刺に失敗したらどうなりますか?

血管外に漏れた場合は圧迫止血を行い、その部位への穿刺は一定期間避けます。無理に同じ場所への再穿刺を繰り返さず、別の部位を検討するのが基本です。

Q

新人が穿刺を覚えるまでどのくらいかかりますか?

個人差はありますが、基本ルールを覚えて一人で対応できるようになるまで数ヶ月〜半年程度かかることが多い印象です。血管の感覚は経験を積むほど磨かれていく部分だと感じています。

Q

シャント音が小さくなったら、すぐに連絡した方がいいですか?

いつもより明らかに小さい、触れない、聞こえないといった場合は、閉塞の可能性があるので、すぐに透析施設に連絡するよう患者さんに伝えます。閉塞は時間がたつほど治療が難しくなるため、早めの対応が大切です。

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