心電図の基本と危険な波形|波形の見方・心拍数の求め方・高カリウム血症のT波

医療機器の基礎

※本記事はPRを含みます。

医療機器の基礎|心電図・心電計

心電図は、病棟のモニターから手術室、透析室まで、あらゆる場面で使われる検査です。「波形の名前は覚えたけれど、どれが危ないのかすぐに判断できない」という声もよく聞きます。この記事では、心電図のしくみと基本の見方から、すぐに対応が必要な危険な波形、透析室で特に気をつけたい高カリウム血症の変化、そしてノイズ(アーチファクト)の見分け方までを、図を使ってまとめました。

医療機器の基礎シリーズ

この記事のポイント

  • 心電図は、心臓の電気の流れを体の表面から記録したもの。P波=心房、QRS波=心室の興奮、T波=心室の回復
  • 記録紙は横1mm=0.04秒、縦1mm=0.1mV。心拍数は「300÷太いマスの数」で目安がつく
  • 心室細動・脈のない心室頻拍・心静止は、波形を見たらまず患者さんを確認し、すぐに蘇生へ
  • 透析患者さんでは、テント状T波(高カリウム血症)を見逃さない

心電図のしくみ

心臓は、右心房にある洞結節から出た電気の刺激が、房室結節→ヒス束→左右の脚→プルキンエ線維と伝わることで、心房→心室の順に収縮します。この電気の流れ(刺激伝導系)を、体の表面に貼った電極で記録したものが心電図です。

記録のしかた 特徴 主な場面
12誘導心電図 手足と胸に電極をつけ、12方向から心臓の電気の流れを見る 検査室・外来・病棟。心筋梗塞の部位の推定など
モニター心電図 3〜5個の電極で、1〜数方向の波形を連続して見る 病棟・ICU・手術室・透析室。不整脈の監視
ホルター心電図 小型の記録器で24時間ほど記録する 日常生活の中で起こる不整脈の評価

モニター心電図は、リズムの異常(不整脈)を見つけるのは得意ですが、見ている方向が限られるため、心筋梗塞のST変化などを正確に判断するには12誘導心電図が必要です。

基本の波形と記録紙の読み方

心電図の基本の波形と見方
図:心電図の基本の波形と見方
波・間隔 意味 正常の目安
P波 心房の興奮(脱分極) QRS波の前に1つずつある
PR間隔 心房から心室へ刺激が伝わる時間 0.12〜0.20秒(小さいマス3〜5個)
QRS波 心室の興奮 幅0.12秒未満(小さいマス3個未満)
ST部分 心室全体が興奮している時期 基線と同じ高さ
T波 心室の回復(再分極) QRS波と同じ向きで、なだらかな山
QT間隔 心室の興奮から回復までの時間 心拍数で補正して評価する
心拍数の求め方

標準の記録条件(紙送り25mm/秒、感度10mm/mV)では、小さいマス1つ(1mm)が0.04秒、太い線で囲まれたマス1つ(5mm)が0.2秒です。

心拍数(回/分)= 300 ÷ R波とR波の間の太いマスの数(または 1500 ÷ 小さいマスの数)

例:R波の間が太いマス4つ分なら 300÷4=約75回/分。リズムが不規則なときは、6秒間(太いマス30個)のR波の数を10倍すると目安になります。

心電図を見るときの順番

1

まず患者さんを見る

波形が乱れていても、電極の外れや体動のことがあります。逆に、きれいな波形でも脈が触れない(無脈性電気活動)こともあります。必ず意識・呼吸・脈を確認します。

2

リズムと心拍数

R波の間隔は規則的か、速すぎないか・遅すぎないか。

3

P波とQRS波の関係

P波はあるか、P波のあとに必ずQRS波が続くか、PR間隔は一定か。

4

QRS波の幅と形

幅が広い(0.12秒以上)QRS波は、心室から出た興奮や、伝導の障害を考えます。

5

ST部分とT波

STが上がっていないか・下がっていないか、T波が高く尖っていないか。

覚えておきたい危険な波形

覚えておきたい危険な波形・注意したい波形
図:覚えておきたい危険な波形・注意したい波形

すぐに蘇生が必要な波形

波形 特徴 対応
心室細動(VF) 形も間隔もバラバラで、QRS波が見分けられない 意識・呼吸を確認し、すぐにCPRと除細動
脈のない心室頻拍(無脈性VT) 幅の広いQRS波が速く続き、脈が触れない 心室細動と同じく、CPRと除細動
心静止 ほぼ平らな線 電極の外れや感度の設定でないかを確かめつつ、すぐにCPR(除細動の適応ではない)
無脈性電気活動(PEA) 波形は出ているのに脈が触れない CPRを行い、原因(出血、高カリウムなど)を探す

急いで医師に報告したい波形

波形 特徴 注意点
脈のある心室頻拍 幅の広いQRS波が速く規則的に続く 急に心室細動へ移ることがある。除細動器を準備
完全房室ブロック P波とQRS波がそれぞれ別のリズムで出る 高度な徐脈で意識を失うことも。ペーシングの準備
モビッツII型房室ブロック PR間隔は一定のまま、突然QRS波が抜ける 完全房室ブロックに進むことがある
ST上昇 QRS波のあとの基線が持ち上がる 急性心筋梗塞を疑う。12誘導心電図で確認
テント状T波 T波が高く、幅が狭く尖る 高カリウム血症を疑う(下記参照)

注意して経過を見る波形

  • 心房細動(AF):P波がなく、基線が細かく揺れ、R波の間隔がバラバラ。新しく出たとき、脈が速いとき、血圧が下がるときは報告します
  • 心室期外収縮(PVC):幅の広いQRS波が予定より早く出る。数が多い、連続する、T波の上に重なる(R on T)ときは、心室頻拍・心室細動に移るおそれがあるので注意します

透析室で特に気をつけたい:高カリウム血症の心電図

腎臓の働きが落ちている透析患者さんは、カリウムが体にたまりやすく、高カリウム血症は命に関わる不整脈の原因になります。特に、透析の間隔が空く週明けの透析前は注意が必要です。

カリウムが高くなるにつれて、心電図は次のように変化していくとされています。

  1. T波が高く、幅が狭く尖る(テント状T波)
  2. P波が小さく平らになり、やがて見えなくなる。PR間隔が延びる
  3. QRS波の幅が広がる
  4. QRS波とT波が一体になったような、なめらかな波形になり、心室細動や心静止に至る

ただし、カリウムの値と心電図の変化が必ず一致するわけではありません。心電図に大きな変化がなくても血液検査では高いこともあります。透析前のモニターでテント状T波に気づいたら、早めに医師へ報告します。

アーチファクト(ノイズ)の見分け方

種類 見え方 主な原因と対策
体動 一部だけ大きく乱れる。乱れの中にもQRS波が続いて見えることが多い 寝返りや歯みがき、ふるえなど。患者さんの様子を確認
筋電図の混入 基線が細かくギザギザに揺れる 寒さ・緊張・ふるえ。保温や、筋肉の少ない部位への電極の貼り直し
交流障害(ハム) 基線に細かく規則的な波が重なる 周りの電気機器、アース不良、電極の接触不良。電極・ケーブルの確認
電極の外れ・接触不良 平らになる、大きく揺れる 電極の乾燥や汗。皮膚を拭いて、電極を貼り替える

心室細動に見える波形が、実は歯みがきや体動だった、ということはよくあります。逆に、ノイズと思い込んで本物の心室細動を見逃してはいけません。波形だけで判断せず、まず患者さんを見ることが鉄則です。

心電計・モニターの扱いで気をつけること

  • 電極の貼り方:皮脂や汗を拭き、乾いた皮膚に貼ります。電極は乾燥すると接触が悪くなるので、決められた間隔で交換します
  • 記録条件の確認:紙送り速度や感度が標準(25mm/秒、10mm/mV)と違うと、波形の幅や高さの見え方が変わります
  • アラームの設定:心拍数の上限・下限や不整脈アラームが、患者さんに合った設定になっているか確認します。アラームを切ったままにしない
  • 電気メスなどとの干渉:手術中は、電気メスを使うと心電図に大きなノイズが入ります。電極の位置にも配慮が必要です(電気メスの記事参照)
たく

現場から見た実感

透析室では、モニター心電図をつけている患者さんの「いつもの波形」を知っておくことが大切だと感じています。普段から心房細動の人、期外収縮が多い人など、ふだんの波形が分かっていると、変化にいち早く気づけます。気になる波形は記録して、前回と比べる習慣をつけるのがおすすめです。

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確認問題

記事の内容をふり返るための確認問題です。答えを考えてから「解答・解説を見る」を開いてください。

問1

標準の記録条件(25mm/秒)で、R波の間隔が太いマス5つ分のとき、心拍数はおよそいくつ?

  1. 50回/分
  2. 60回/分
  3. 75回/分
解答・解説を見る

正解:2 300÷5=60回/分です。

問2

QRS波が表しているものはどれ?

  1. 心房の興奮
  2. 心室の興奮
  3. 心室の回復
解答・解説を見る

正解:2 P波は心房の興奮、QRS波は心室の興奮、T波は心室の回復を表します。

問3

透析患者さんで、T波が高く幅が狭く尖っている。まず疑うのはどれ?

  1. 高カリウム血症
  2. 低カリウム血症
  3. 低血糖
解答・解説を見る

正解:1 テント状T波は高カリウム血症で見られる代表的な変化です。

問4

モニターに心室細動のような波形が出た。最初にすることはどれ?

  1. 記録紙を印刷して医師に見せる
  2. 患者さんの意識・呼吸・脈を確認する
  3. 電極を貼り替える
解答・解説を見る

正解:2 体動などのアーチファクトのこともあるため、まず患者さんを確認します。本当に心室細動なら、すぐにCPRと除細動です。

問5

心静止に対する対応として正しいのはどれ?

  1. すぐに除細動する
  2. CPRを行う
  3. 同期電気ショックを行う
解答・解説を見る

正解:2 心静止は除細動の適応ではありません。CPRを行い、原因を検索します。

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まとめ

心電図は、P波・QRS波・T波の意味と、記録紙のマスの読み方を押さえるだけで、ぐっと読みやすくなります。心室細動・脈のない心室頻拍・心静止は、波形を見たらまず患者さんを確認し、すぐに蘇生へ。透析室では、週明けの高カリウム血症によるテント状T波に特に注意しましょう。ノイズとの見分けも含めて、「波形だけで判断しない」ことが何より大切です。

参考資料

  • 日本蘇生協議会「JRC蘇生ガイドライン2025」
  • 各心電計・生体情報モニタの添付文書・取扱説明書

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